政策

社説 中古住宅取引の安全安心 瑕疵保証サービスを育てよう

 3月末までの期間限定とはいえ、不動産流通大手各社がキャンペーンの中で、中古住宅の取引成立後に生じた瑕疵(かし)保証サービスを実施している。専属専任または専任媒介契約を締結した物件売主の瑕疵担保責任期間3カ月とそれ以降、買主負担となる9カ月間の計1年間に、雨漏り、シロアリの被害、建物構造上主要な部位の木部の腐蝕などが発見された場合、補修費用を最大250万円まで保証するものだ。「あんしん仲介保証」「補修保証サービス」「住宅補修サービス」「瑕疵保証」「あんしんサポート」など名称は異なるが、保証内容はほぼ同じ。

 戸建て住宅は築20年以内、マンションは築25~30年以内であることなど物件には一定の条件が付くが、売主の瑕疵担保責任とその後瑕疵が発見された場合の買主の、双方のリスクを回避できるのが大きな特徴だ。事前の建物検査(インスペクション)費用や瑕疵が発見された場合の補修費用が実際どの程度になるかは検証を待たなければならないが、費用は仲介業者が売主か買主から受け取る仲介手数料の中から捻出されることになる。

恒常化には課題も

 この種のキャンペーンではこれまで、各社とも売主向けのインスペクション無料サービスなどを展開していたが、今回はそれから大きく踏み込んだ格好だ。同時に、設備の故障や入居後の水回りのトラブルに対する24時間サービスを打ち出す企業もあり、取引の安全安心サービスは大きく前進したように見える。実際、このサービスは「売り」「買い」双方の需要を集めるための〝有力な武器〟になっているようだが、このサービスが浸透して恒常化するかとなると、乗り越えなければならない課題も多く残っているようだ。

 瑕疵担保責任は本来売主にあるため、仲介業者が瑕疵保証サービスを行うのは筋論からしておかしいという指摘があるほか、建物検査などの有料サービスを常に無料とするわけにはいかない、今後業界内で様々な立場からサービス合戦がエスカレートする恐れ-なども予想される。このように、キャンペーンと同じ内容で恒常的なサービスとするのは難しそうだが、取引の安全安心、消費者保護の流れを一歩進めるサービスであるのは間違いないだろう。

 既に数年前から、インスペクションと既存住宅売買かし保険を活用して仲介業務やリノベーション事業を展開する中堅企業も出ている。今回の流通大手の瑕疵保証キャンペーンはまだ途中だが、実施企業では需要者から一定の評価が得られたと見ている。

 その意味では、今後サービス内容などを再点検し、多くの業界企業が取り扱い、多くの需要者が利用できる、新しいサービスとして育てていく必要がありそうだ。