政策

社説 13年度 税制改正大綱 相続税強化は都市創造の好機

 自公連立与党の税制調査会による13年度税制改正大綱の決定が、大詰めを迎えている。14年4月から消費税率が8%に引き上げられることに伴う対策が中心になるが、このほか不動産業界にとっては、相続税の強化にどう対応するかは、不動産の担い手として考えをめぐらすいい機会である。

 改正案によると、現在の基礎控除5000万円にプラスして、法定相続人の数に1000万円を乗じた合計額だったものが、3000万円プラス法定相続人の数に600万円を乗じた合計額と、大幅に改正される予定だ。このほかにも最高税率の引き上げ等々があげられている。

 今回の強化で、相続税の対象になるのは一部の資産家だけではなくなる。この通りに改正されると、死亡者に占める課税対象は4%から、6%程度に広がると予想されている。特に地価の高い首都圏では4人に1人が課税対象になるのではないかとも言われている。

賃貸経営以外の選択も

 相続税が強化されると、節税のために地主はアパートを建てたり、またマンションを購入して賃貸経営をしようという動きが加速する。不動産投資に対しても積極的になることが予想される。だから不動産業界にとっては、追い風である。

 しかし、住宅が余り、そもそも人口減少の傾向に変わりはないのだから、賃貸経営に集中するのは、芸がないのではないだろうか。この際、新しい時代にふさわしい都市の創造へ向けた土地有効活用を目指したい。

 例えば節税メリットを賃貸経営だけに限らず、土地を保有したまま、公共施設や公園にした場合は、固定資産税をゼロにするなど思い切った優遇措置を与えてもいい。賃貸住宅との併設でも、同様のメリット供与が考えられる。定期借地権も大いに活用したい。

 維持管理では、自治体だけでなく、例えば市民農園などを民間に任せた場合も、地主には賃料以上のメリットを与えることが検討されていいだろう。特に商業施設には適さない住宅地では、環境に配慮した土地活用は地域の付加価値を上げることにも役立つ。

事業機会多い不動産業

 立地条件によっては、資産の組み換えも検討したい。こうなると税理士というより、不動産業界の出番である。ディベロッパーやハウスメーカーだけでなく、不動産仲介業者も含め、叡智を総動員したい。

 賃貸住宅が余っていて、空き家が多い現状を俯瞰すると、節税の選択肢が限られていたことも否めない。加えて、相続に絡む土地活用を手助けできる企業や人材が不足していることもあろう。

 相続は、発生してから不動産の活用を考えるのは、時間的制約もあり難しい。不動産業がアドバイスできる事業機会は数多い。