政策

社説 消費税増税と住宅取得 需要者の負担軽減は還付で

早く税制論議を

 世界的な経済の減速に日中間の緊張関係が加わって、先行きに不透明感が強まった我が国経済。一方、臨時国会の開催はいまだ決まらず、衆議院の解散時期も依然流動的だが、今後の国民生活や経済動向と密接に関係する重要法案は、一刻も早く論議を尽くしてもらいたい。その一つが13年度予算・税制改正である。

 特に今年度は、8月に消費税増税法案が成立(14年4月に8%、15年10月に10%と2段階引き上げ)したことで、税制改正論議は例年以上に大きな意味を持つ。住宅・不動産業界にとって、消費税増税は需要者に過大な税負担を強いることから、住宅取得に伴う消費税は、特段の配慮が必要との立場を取ってきた。それが民自公の3党合意、つまり「住宅の取得については13年度以降の税制改正及び予算編成の過程で総合的に検討」「消費税率8%への引き上げ時及び10%への引き上げ時にそれぞれ十分な対策を実施」することにつながった。

 例えば5000万円の分譲マンションで土地代が2000万円、建物代が3000万円の物件の場合、現行消費税額は150万円だが、税率が10%に引き上げられるとその額は300万円になる。勤労者世帯の年収が減少する中で、この負担増は極めて重く、子育て世代にとっては住宅取得の夢をあきらめざる得ない税額となりかねない。それは駆け込み需要の発生とその反動をもたらすおそれもある。97年に3%から5%に税率引き上げられた際、96年に163万戸あった新設住宅着工戸数が98年には118万戸まで減少した苦い経験がある。業界にとっては死活問題でもあるのだ。

 そのため住宅・不動産業界は、「住宅取得の税負担を現行以上増やさない」こと、「5%を超えた分は還付することなど、消費税制の枠内でこれ以上増やさない措置をビルトインする」ことを一致して要望。これを実現することで、需要者の負担増は軽減され、安定的な市場が形成されるためだ。

 その消費税増税に伴う住宅取得の取り扱いが具体的にどうなるのか。その正念場が13年度税制改正議論である。住宅取得への配慮は、国民生活への配慮でもある。その増税分は、住宅ローン減税など所得税や住民税での減税ではなく、将来を担う子育て世代にとって確実な効果が得られる、業界が要望する「消費税制の枠内での還付」という形が最も適当だろう。その形で実現してもらいたい。

 また、消費税増税そのものは、一定の経済成長を前提に実施することになっているが、いまその経済の足元がふらついている。消費税増税を国民の不安なく実施するためにも、経済のテコ入れも忘れてはならない。住宅は国民生活の基盤であり、内需の柱でもある。経済活性化のためにも、大いに議論を尽くしてもらいたい。