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大言小語 子供を育む住まい

 家への帰路、電車に若い夫婦がベビーカーを操りながら乗ってきた。赤ん坊は大人しくしていて、時折、母親が様子を見る姿は微笑ましいはずだった。それが午後11時45分のことでなければ。しばらく大人しくしていた赤子も、酔っ払いたちの喧騒に刺激されたのか、むずがり出した。当然だろう。欧米なら、もうこの段階で虐待で身柄拘束されるケースもある。

 ▼どうやら、こんな状況はザラのようだ。ここまで酷くなくても、寝台特急で赤ん坊連れも珍しくないという。小児科の医者によれば、いくらゆったりとした座席であっても、電車の揺れや騒音などにより、睡眠リズムが乱れるなど害があるので10時間以上の移動は無理という。もちろん、自動車においてもだ。

 ▼子供の数が少なくなったから、一人の子供にかける教育への情熱は費用だけでなく、期待も含め過剰とまでなっている。一方で、親の側が、自己の事情を優先して、子どもに悪影響を与えるケースも増えている。

 ▼「子供の頭がよくなる家」など、住宅業界でも子供に焦点を当てた商品が増えているが、「頭の良い」子供が「頭の良い」大人になっても、社会のために役立たないケースは見飽きているのではないか。住まいを考えるに当たり子供の教育は重要だが、それは「頭脳」だけでなく、家に暮らす親子みんなの心と身体を育むものという観点が必要だろう。