政策

社説 中古住宅の流通活性化 家の履歴を起爆剤に

 某誌の連載記事に「家の履歴書」というコーナーがある。なかなか好評で、ご存知の方も多いだろう。著名人が住んできた家を、イラストとともに、人となりを紹介するものだ。あの人は、こういう住まいで暮らしていたから、今の姿があるのかなと感じ入ってしまうこともある。

 「家の履歴書」は著名人にかかわらず、すべての人にある。しかし、いざ中古住宅の活性化のためとなると、現状はお寒い。

フォーマットを示せ

 家の履歴(住まいカルテ)を整備することは以前から叫ばれているが、思うように機能していないのだ。普及しないのは、何より不動産は期間が長期にわたること、そして履歴のない不動産が転売されていくにつれて、氏素性が分からなくなるからだ。住宅の長寿命化が進めば進むほど、住まいカルテは欠かせないのに。

 地盤についても、先の「不動産流通市場活性化フォーラム」の最終提言で、液状化への関心が高まっていることを背景に、履歴情報の統一化や標準化の検討が求められている。

 住まいカルテについては、大手ハウスメーカーを中心に、自社で建てた住宅を「スムストック」というネーミングで履歴を保存している。ただメーカーを通じてリフォームした場合、その履歴が残るが、メーカーを通さずにリフォームを手掛けたケースでは、履歴に反映されない弱点も散見される。

履歴で価値アップを

 何らかの公的機関で履歴が整備されることが望ましいが、履歴市場が構築されるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

 まずは建築会社、仲介業者、リフォーム会社など企業側で、請負工事の内容を長期にわたって保存するのがいい。ただ30年、50年といった長期にわたると、一部の企業を除いては現実的ではないだろう。そうであれば請け負った側で工事履歴を施主側に手渡し、保存を促す努力をすべきである。

 その際、大事なのは必要な項目について統一されたフォーマットがあると、万人に分かりやすい。行政機関は、まずそうしたフォーマットを早急に示すことが必要である。

 履歴で必要なことは何か。いつ売買されたかは登記をみれば分かる。必要なのはリフォームの履歴だろう。それは建物の価値をどう見るかにもかかわってくる。償却期間などで一律に減価していく姿勢も修正していかなければならない。もとより履歴を重視する目的は、その不動産が正当に評価され、流通が活性化されることに尽きる。

 履歴がはっきりしている中古住宅の価値が高くなれば、一般消費者の間でも自然と機運が醸成されていく。また履歴を明示することで、売買成約率を上げる努力をするのは、不動産業界のレベルアップと活性化につながる。