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社説 賃貸住宅のミスマッチ 高齢者は長期優良入居者

 民間賃貸住宅の空き家が多い。国の統計としては4年前の調査だが、全国で413万戸、18.8%に達している。一方で、高齢者が安心して住める賃貸住宅が少ないというミスマッチが起きている。

 背景には公営住宅の建設が縮小されていることもあるが、何より家主側に高齢者を敬遠する傾向があることは否めない。「1人で住んでいて、事故が起きたら困る」とか、「防災面で不安」「バリアフリーに対応できない」といった声が聞かれるのだ。

高齢化は成長市場

 しかし、こうした思いは改める必要がある。わが国の総人口に占める65歳以上の高齢化率は、すでに23%を超えている。多くの産業が高齢化社会を成長産業のひとつと位置付けているのは、そのためだ。高齢者は若い人たちとは違って、仕事や個人の事情で住まいを軽々には変えない。言ってみれば長期優良入居者である。

 国は、高齢者向け優良賃貸住宅や高齢者円滑入居賃貸住宅など複雑だった制度を、昨年、サービス付き高齢者向け住宅制度に一本化した。それでも事業者が認定を受けるための要件は多い。

 また新たな施設づくりが前面に出ている感が強い。もちろん後期高齢者の4割近くが、介護サービス付き住宅への入居を希望している現状からすると、供給が少ないといった現状もある。

 一方では、新たに高齢者向けの住宅や施設をつくるより、既存の空いているストック、賃貸住宅を活用するほうが、国民経済的にも合理的だ。むしろ、そうしなければ急速に進む高齢化に住まいが対応できない事態に直面している。

 ミスマッチがなかなか解消しないのは、家賃を補助すればいいとか、バリアフリーにすればいいという問題だけではないのではないか。数字合わせではないものが漂っているからではないだろうか。

仲介業は身近な存在

 最近はシェア住宅でも、高齢者が混じったタイプが登場してきている。自治体によっては、民間賃貸住宅のそばに、1人暮らしの高齢者を見守るための施設を置くところも出てきた。流通業や電鉄会社のなかには、単に商品を届けるだけでなく、セキュリティや介護など様々な住民の相談に応えていこうという取り組みも始まっている。

 これらが町ぐるみでできれば、いちばんいい。それは近隣との関係が現代のように希薄ではなかった、かつての日本の姿でもある。

 これらの取組みが重層的に行われていけば、家主側に高齢者を避ける理由は解消していく。そのうえで仲介業の側は、どちらかといえば家主に目が向いている傾向があるが、高齢者に寄り添い、賃貸住宅あっせんを積極的に取り組んでいくことが求められる。