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社説 消費税、住宅に配慮を 思い負担、マイホームが遠のく

 消費税引き上げが俎上に上っている。社会保障と税の一体改革のなかで検討されている大きな課題の1つだが、先般、野田佳彦首相がG20での演説で「10年代半ばにも10%への引き上げ」を表明したことで、既定路線化しつつある。国内で議論が固まっていないのに「国際公約」にされてはかなわないが、現在の財政の状況を見ると、消費税引き上げは打開策の1つとして、遠くないうちにその結論を出さなければならない情勢にある。

 どこまで引き上げるのか、一律引き上げでいいのか、生活必需品はどうするか、相対的に重税となる弱者への配慮はなど、乗り越えなければならない壁は幾つもある。そして住宅である。その購入や建築など取得時にかかる消費税の額は半端ではない。

 

手取り年収を上回る

 例えば、東京で5000万円(土地2000万円、建物3000万円)の新築マンションを購入した場合、建物代に5%、つまり150万円の消費税が現行でもかかっている。3000万円の注文住宅を建てた場合も同額である。150万円といえば、30歳代のサラリーマン層が親の援助を受けながら何とかマイホームをと、中古マンションを購入する際の頭金の半分程度に相当する大金だ。その消費税率が10%になると、2倍の300万円である。これは年収がほとんど伸びていない30歳代世帯の手取り年収をも上回ってしまう金額で、それを一度に払えというのは重税以外の何ものでもない。それだけでなく、我が国の将来を担う若者のマイホームへの夢を奪うことにもなりかねない。

 ここで例に挙げた建物代3000万円の住宅は少し高級かもしれないが、最初からその半額の住宅を目指さなければならないとなると、これもまた夢のない話である。活力のある日本の将来を描く観点からも、住宅からこれ以上過酷な税の取立ては避けるべきではないか。しかも、住宅取得を巡っては、土地と建物にそれぞれ登録免許税、不動産取得税、初年度固定資産税・都市計画税、更に契約書の印紙税と多岐多重な税がかかっているのだ。不動産協会の試算では、前述の5000万円の新築マンションの場合、その総額は現行(消費税5%)で209万円であり、消費税が10%になると359万円まで負担が増大する。

 

経済全体にも打撃

 言うまでもなく住宅は国民生活の基盤であり、しかも一生に1度か2度の大きな買い物である。また、経済波及効果の大きさから内需の柱として日本経済を支える機能も併せ持つ。それだけに、国民のマイホームの夢を遠のかせる住宅消費税の引き上げは、住宅関連投資の減速を招き、日本経済全体へも打撃を与えかねないのである。これから消費税全体の議論が本格化するが、住宅をどう取り扱うのかについて、注視する必要がある。