総合

大言小語 これからの住宅産業

 昭和35年創業の要土地が、新時代の住まい方として注目されるシェアハウス事業に参入した(5面参照)。35年といえば、池田内閣の国民所得倍増計画が閣議決定された年。本格的な高度経済成長時代の幕開けでもあった。

 ▼以後、住宅政策は大都市での住宅不足を解消する住宅供給5カ年計画を柱としてきた。内容面での特色は『住宅すごろく』の言葉に象徴されたように、最終目標を持家の取得としてきたことだ。マイホーム主義やマイホームパパといった言葉も流行した。近年は量的充足はもちろん、質の向上もほぼ一段落し、省エネやスマートシティなど環境配慮型の街づくりが次世代への課題として残るのみとなった。

 ▼そして今、ようやく住まいとは何か、住まいと家族の関係、家族の絆を育む住まいのあり方などに業界の関心が向かい始めた。要土地も創業52年の今年、シェアハウスへの参入を機に、建物のあっせんだけではない、人々の暮らしにコミットする新たな不動産業への脱却を目指す。

 ▼それは、単に管理や運営などサービスの提供ということではない。「内需拡大の柱」「大きな経済波及効果」など、未だに景気との関連で議論されがちな住宅を、人が暮らすという視点から捉え直すことである。住宅投資が大きな経済波及効果を持つことは明らかだが、それは結果であって、それを目的にしまうことがあってはならない。