政策 総合

社説 「防災の日」を点検の日に 大地震への備えは万全か

 3月11日の東北地方太平洋沖地震が起きて初めての「防災の日」。首都圏ではこの9月1日を中心に、政府や各都県、市町村、町内会組織などを含めた総合防災訓練が実施され、今後も順次行われる予定だ。今年の政府想定は、首都圏を直下型地震(マグニチュード7.3、最大震度6強)が襲うというもの。東日本大震災での地震動(揺れ)の記憶が生々しいだけに、訓練もより実践的に、本番さながらの真剣な取り組みが目立つ。

地震は必ずやってくる

 振り返ると、3月の大地震は我々に多くのことを教えてくれた。首都圏は幸いにも、東京臨海部などでの地盤の液状化被害を除くと、建物や施設の大きな損壊は免れ、人命被害も最少にとどめることができた。だが、それが日頃の防災への備えの賜物かというと、そうは言い切れない。たまたま、地震動の大きさや向き、揺れ方が幸いしたのかもしれない。

 大地震はいつ、どんな規模で襲ってくるのか分からない。神のみぞ知るだが、いつか必ずやってくるものでもある。

 3.11のその時、東京では震度5強を記録。東京・西新橋では、本震は約5分間揺れてようやく収まった。東京・西新宿の超高層ビルの上層階では揺れが13分間続いたという。これまでの常識を打ち破る揺れの長さである。「建物が倒れるのではないか」と肝を冷やした人も多いだろう。この地震でビルや道路施設などがかなり傷んだことは、至るところで改修工事が行われていることでも明らかだ。首都直下でもっと大きく激しい地震動が襲ってきたらと考えると、その対策は万全でなければならない。建物の耐震強度の確保はもちろん、エレベーター閉じこめ対策は、事務所や住宅での落下物はないかなど、改めて身の回りを点検する必要がある。

食料は最低3日分

 次に、大地震の際は、当面は助けが来ないことを前提とした飲料水や食料の確保などの備えが必要だ。東京都広報では、家庭や地域、職場で「最低3日分」を備蓄・確保する必要があると呼びかけている。地域全体で被災するため、誰も動けず、救助隊や物資の到着にも時間がかかるためだ。また、3月の震災では、首都圏でも帰宅困難者(難民)が話題となったが、直下型地震では、その数は約650万人に増大すると想定され、その対応の難しさが浮かび上がる。

 恐らく、揺れが収まった後も道路の安全確認や通行路の確保に相当な時間がかかり、車や徒歩で帰宅する行動自体が制限されることになるだろう。そのためにも、主要幹線道路沿いの建物の耐震化対応と共に、道路関連設備の強度と機能の確保が急がれる。

 首都直下型地震が発生した場合、東京都では東日本大震災を更に上回る被害や混乱が見込まれるとしているが、そうならないための備えと行動が必要である。