過渡期にあるトランクルームビジネス

ニッチ産業から成長産業へ(3)〜過渡期にあるトランクルームビジネス〜

■多様な運営方式で差別化 — 京葉物流

京葉物流(東京都江東区、藤井利彦社長)は、物流倉庫会社・丸善グループの企業であり、倉庫業からトランクルーム事業(ブランド名=「プライベートBOX」)に参入してきた企業だ。

首都圏(1都3県)のみで展開し、現在約30ヵ所(3500室)を展開している。強みは、運営方式として

(1)借り上げ方式 (2)管理委託方式 (3)購入方式 (4)借地方式

の4つの手法を、空きスペースがあるオフィスビルや賃貸住宅、店舗などの物件オーナーに提案できる点だ。

「借り上げ方式」は、同社が物件に、トランクルームに必要な設備投資を行った上で一括借り上げするもの。オーナーにとっては、初期投資やリスクがなく、長期安定経営ができる点が魅力だが、稼働に応じたプラスαのメリットはない。

「管理委託方式」は、オーナー自身が物件に設備投資を行い、同社は管理業務を請け負う仕組み。オーナーのメリットとしては、稼働状況が良ければ収益が高まるという点がある。一方で、初期投資がかかることのほか、稼働が上がらないといったリスクはオーナーが負うというデメリットもある。

「購入方式」は、同社がオーナーの物件を買い取るプラン。

「借地方式」では、同社がオーナーから土地を借り、定期的に地代を支払う方式で、オーナーにとっては建て替えやリフォームなどの自己資金負担がなく行えるが、借地権を設定するために担保価値が下がることなどのデメリットがある。

購入当時は空ビルだったが、現在は1階から3階をトランクルームとして運営しているMK小石川ビル

(写真)購入当時は空ビルだったが、現在は1階から3階をトランクルームとして運営しているMK小石川ビル」

通常、一般的なトランクルーム事業においては、ここまで多様な運営方式を提案することはない。「4つの運営方式の中から、物件オーナーのニーズ対してに最適な提案ができることが、他社にはない当社の最大の強み」(岩浅亘トランクルーム部係長)という。
また、物流倉庫会社を親会社に持つということから、資金力と与信力が高いというバックボーンもある。リーマンショックや東日本大震災以降、このような点がオーナー層などに評価されて、東京都内の利便性の高いエリア(例えば半蔵門や白金台)などでも事業展開が可能になるなど、「市況の好転を感じている」という。

 

■組立式TR「頑ちゃん」発売 — イーソーコ総合研究所

イーソーコ総合研究所(東京都港区、遠藤文社長)は、トランクルームの物件開発や運営・管理を行うのではなく、組み立て式トランクルーム「頑ちゃん」(今年3月発売)を販売しているというユニークな企業だ。空室対策として投資をできるだけ少なく、手軽にトランクルーム事業を開始したいという、オフィスなどのオーナー向けに開発したもの。組み立てなどの作業が容易で、設置がしやすいのが特徴となっている。

室内置き型の「頑ちゃん」。床固定しないので動産契約も可能だ

(写真)室内置き型の「頑ちゃん」。床固定しないので動産契約も可能だ

幅137mm×奥行き187mm×高さ228mmのスチール製。日曜大工程度の作業で組み立てられる。床に固定しない置型タイプなので、利用者と「動産」扱いとして契約できる。そのため、ビル建て替え時の立ち退きの問題も発生しないという。屋内専用でオフィスビルの空室をトランクルームとして活用するのに最適だ。標準価格は9万8千円(税込み)。

親会社・イーソーコは、元々、物流倉庫に特化した仲介事業を展開しており、トランクルームに関する事業は空き倉庫活用の一環としてスタートしたものだ。オフィス向けの「頑ちゃん」を開発する前には、レンタル収納「プレザント」、倉庫内の認定トランクルーム「トラボくん」などの商品も発売している。

「頑ちゃん」については、「例えば建て替えたいと考えているオフィスビルを所有するオーナーが、テナントが退去するまで空いているスペースをトランクルームとして活用し、収益を得るといったニーズがある」(イーソーコ物流不動産部・登坂雅樹課長)という。

ところで、イーソーコの強みの一つとして、日本最大の物流施設検索サイト「イーソーコ.com」も運営・管理している点があげられる。あわせて、「イーソーコ.com」と連動したトランクルーム専用検索サイト「e-トランクルーム.com」も運営している。「『頑ちゃん』をご購入いただければ、『e-トランクルーム.com』内でお勧め物件として無料で登録する」(同)という点も魅力となっている。