社説「住宅新報の提言」

強まる海外との結びつき グローバル化へ言語力磨け

 経済のグローバル化が進む中、内需産業といわれる住宅・不動産業の海外進出、外需の取り込みが活発になってきた。高い経済成長が続いているアジア市場、アジア需要を対象にした事業が目立つのが特徴で、中でも膨大な人口を抱える隣国の中国などの巨大マーケットが熱い注目を集めていることは周知の通りだ。

多様化する海外事業

 大手デベロッパー各社が海外で手掛ける開発事業も、住宅をはじめビルや商業施設などと、事業に幅が見られるようになってきた。長期にわたる住宅の潜在需要に期待が大きいハウスメーカーの進出も著しい。また、仲介会社や賃貸管理会社など大手・中小を問わず幅広い企業の間で、海外とつながりを強める動きも表面化している。東京都心で成功を納めた街づくりを、そっくりそのまま自国内に開発してもらいたいなどという、大胆なオファーの声もデベロッパーに舞い込むようになった。
 活発な海外進出の一方で、反対に海外からの需要を日本国内に呼び込む動きも同様に顕著だ。賃貸住宅市場では、留学生や外国人の受け入れを促進し、少子化で空室が増える賃貸住宅の入居促進につなげている。賃貸会社の中には、増える外国人客の対応として中国語や韓国語ができる外国人スタッフを置く賃貸店舗も珍ずらしくない。中国マネーを日本での不動産投資につなげたいとする投資セミナーも頻繁に開かれている。

英語公用語化も一案 

今回の海外ブームは、海の外へ進出したり、投資するだけの一方行の海外事業にとどまらない。国内への外需取り込みが同時並行で進んでいる双方向型になっている点でこれまでと大きく異なる。外国へ進出する意味合いで使われることの多かった「海外事業」の定義も、両者の意味を持つ「海外事業」に改める必要があるかも知れない。また、どちらかといえば資本力のある大手に軍配が上がっていた海外事業だが、事業基盤の小さい中堅中小でも、やる気ときっかけさえあれば成功できる可能性も高くなっている。
 海外とりわけアジアとの結びつきがますます増えることになる企業活動で、今後大きな課題となってくるのが言葉の壁だ。英語教育がそこそこ普及していても、外国人とのコミュニケーション力は特に低いといわれる日本人。日本人の多くがそう自覚していることも問題だが、要は実戦経験の足りなさが何よりの理由だろう。
 昨年は、社内の英語公用語化を打ち出した楽天が話題に上った。不動産業界でも、社員の英語、中国語の習得を奨励する企業がでてきている。国内の競争にしか慣れていない住宅・不動産業の企業が国際競争に本格参戦するには、まずは言語力を向上することが第一ステップになる。活路を見い出した海外事業が順調に進むかは、国内以上に人材によるところが大きい。グローバルな人材育成そのものが、海外事業の競争力アップに直結する。