総合

大言小語 豊かさを探して

 報道各社の年末の紙面を飾るのは、恒例の重大ニュースだ。今年最終号の本紙の重大ニュースにうなずく人、うなずけない人、紙面に載らない出来事を思い浮かべている人もいることだろう。

 ▼今年最も多くの人の記憶に残った出来事といえば、新天皇即位とこれに伴う新時代「令和」が始まったこと。今年起こったことでさえすぐに忘れ去るか、1年以上も前のように感じられるが、新元号が年を重ねる間、人々の記憶に長くとどまるだろう。そして、これまで平穏だった国や地域が慌ただしさを見せている世界情勢の中、戦後昭和から平成と受け継がれた平穏な暮らしが、令和の世も続いてくれることを願いたい。

 ▼あるリノベーション会社のトップはインタビューでこう語った。「仕入れ物件の対象から、完成年が昭和の物件を外す戦略を取り始めた」と。築古物件や老朽化した物件をよみがえらせるリノベーションとは矛盾した発想とは感じつつも、うなずかずにはいられない。なぜなら、それほどに国民の住生活環境が貧しかったことの裏返しだからだ。

 ▼終戦直後、「すべての国民に豊かな住まいと幸せを」という願いを込めて出発した小紙も創刊から七十余年が過ぎた。争いのない時代が続いてきたのに、いまだに「豊かさ」が実感できないでいることは残念でならないが、そこに真の「豊かさ」を手に入れるヒントが秘められているようにも思える。