住宅に関わる消費税については、導入時に課税の是非が議論され、導入後も税率が引き上げられる度に非課税と軽減措置が繰り返し要望されてきた。しかし、今回も住宅に対する軽減措置は見送られる公算が高く、高額な住宅にも二桁の税率はもはや避けられない状況といえそうだ。
国は前回と同様に、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金、贈与税の非課税措置の拡充といった対策を繰り出して今回の増税を乗り切る構えだ。一連の対策が不可欠であることに変わりはないが、しかしこれらも一時的な緊急避難措置にすぎない。その適用期限が過ぎれば、残るのはますます重くなった税の負担だけだ。
更に先を見越せば、再び税率引き上げが繰り返される可能性が高い。課税対象の中でも住宅は最も税額が高額となるため、税率が一律に引き上げられていくならば、いずれは平均所得層の限界を超えてくることは明らか。所得水準が低く子育て期にある一次取得者層が、将来に対する不安を抱えることなく、計画的に住宅を取得できるようにするには、どこまでが適切で公平な負担なのか徹底した議論を続けるべきだ。
今回の引き上げに際しては、住宅需要の平準化にもより重きが置かれたのも特徴だ。過去に税率が5%、8%と引き上げられた際は、共に駆け込み需要が発生し増税後にその反動減が生じた結果、住宅着工の落ち込みが長らく続いた。こうした過去の反省材料を踏まえ、今回は増税後の落ち込みを下支えする対策にとどまらず、駆け込み需要を平準化することにも配慮した措置が講じられている。
それらの効果かは未知数だが、経過措置期限まで半年に迫った今年の秋商戦では駆け込みの気配はほぼ見受けられず、今のところユーザーの動きは落ち着きを見せている。「年明けに商戦がずれ込む」「経過措置期限までには多少の駆け込みが発生するのではないか」といった業界関係者の見方があるものの、現在の市場の動きを見る限り需要の高まりはほぼ限定的といえそうだ。
しかし、安心するには時期尚早だ。住宅ローン減税拡充の行方次第では、経過措置以降でも駆け込みが生じる可能性がまだ残されている。また「山(駆け込み)なく、谷(反動減)のみ」という展開も予想され、住宅需要の縮小のみがピッチを早めて進むという最悪のシナリオも懸念されるところだ。
国民生活の基本と言わる「衣食住」の中で、住宅についてはこれまでも若年世代を支援する様々な税の軽減策が取られてきた。それにもかかわらず、消費税については導入から30年一貫した増税が続く。超高齢社会に突入した日本の経済を支えるという重圧を背負っていくのが若年世代だ。彼らの生活基盤となる住宅の取得を最大限支援していくことが、今何よりも最優先されなければならない。