売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(22) 借入金額は年収の約7倍が基本「住宅ローンと資金計画」

 住宅ローンの商品選定と紹介(あっせん)は不動産取引の成約に直結するのでとても重要なポイントとなる。だから各金融機関の住宅ローンの商品概要と、紹介方法、資金計画への組み入れ方は常に勉強しておく必要がある。

 また顧客から信頼を得るにも一役買う。住宅金融支援機構が2022年4月に調査した「住宅ローン利用者の実態調査」では「住宅販売事業者(不動産会社)の勧め」で住宅ローンを選んだとする方が約2割と、金融機関や家族友人、FPらの勧めとする方が1割にも満たない中、ダントツで影響ある結果となった。それだけ、不動産会社や営業担当者に期待されている箇所と言える。

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 さて、資金計画では「購入価格+諸費用=自己資金(資金援助含む)+住宅ローン借入可能額」という計算式で検討する不動産の購入可否を判断するため、私たちは住宅ローン借入可能額の計算方法を知らなければならない。一般的にはおおよそ次のような計算方法で把握していく。

 「借入可能額=年収×返済比率÷12カ月÷X×100万円」

 ※Xは審査金利における100万円当たりの月返済額

 このように年収、返済比率、審査金利の数値が分かればおおよその借入可能額が分かってくる。

 なお、年収は所得控除前の額面上の金額。返済比率は審査上で用いる「収入(年収)のいくらまで(比率)なら住宅ローンとして支払うことができるのか」という審査基準。審査金利は審査する際に用いる金利のこと。

 年収は源泉徴収票などで分かる。返済比率はフラット35では年収400万円未満は30%以下、400万円超は35%以下と公開されており、他の金融機関でも30~40%であることが多いため35%で考えておけば大きく外れない。

 ただ、最後の審査金利は非公開であるため、一般的に言われる3~4%を当てはめて検討することになる。

 なお、一部金融機関では実際に適用する金利(適用金利)を審査金利にすることがあり、それは教えてくれるので事前に確認しておきたい。

 この計算式を用いてみる。年収500万円、融資期間35年、返済比率35%、審査金利3.5%(100万円当たりの月返済額は金4132円)とすると、借入可能額=500万円×35%÷12カ月÷4132円×100万円となり、結論は約3529万円となる。年収500万円の約7倍だ。

 そのため、概算で考えるなら年収の7倍ぐらいが借入可能額。一方で適用金利なら約10倍となるので、大まかに借入可能額は年収の約7倍が基本で、場合によって約10倍まで可能と考えて資金計画に用いたらよいだろう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。