政策

社説 〝追い出し条項〟違法判決 迅速な実務対応が必須

 昨年12月、最高裁判所が賃貸借契約に伴う家賃保証契約において、家賃保証会社が定めるいわゆる〝追い出し条項〟に関し、違法であるとの判決を下した。このことによる実務への影響が憂慮されている。

 この判決は、賃貸住宅で家賃を一定期間滞納するなどした場合に、物件を明け渡したとみなす家賃保証会社の契約条項が違法かどうか争われた裁判で最高裁が「違法」と認めたもの。その条項とは、家賃保証会社が賃貸住宅の借主と交わす契約に、「家賃を3カ月以上滞納したときは催告なしで賃貸借契約を解除できる」などとするものだった。

 詳細については、本紙記事(22年12月20日号)を参照いただきたいが、判示(事実認定や法解釈の判断)だけでなく、最高裁が結論を導く際に、「契約関係の解消に先立ち、賃借人に賃料債務等の履行について最終的な考慮の機会を与えるため、その催告を行う必要性は大きい」として、無催告解除が認められるケースを相当限定しているところが注目される。

 原審である大阪地裁や大阪高裁では、賃料などを3カ月分以上滞納した場合に、保証会社が賃貸借契約を無催告で解除することについて、「格別不合理ではない」としていた。このケースで保証会社の保証範囲は最長48カ月分にわたり、賃貸人は賃借人が滞納しても、賃料未払いリスクから免れるのに対し、保証会社は賃借人が賃料不払いを継続することによる保証債務拡大リスクを負うことになる。このリスクの一部を賃貸人にも負担させるため、賃貸借契約継続の判断・決定権限を保証会社にも与えるのが解除権付与条項だとしているのだ。

 経済効率的な立場からは首肯できる判断かもしれない。しかし、最高裁は、賃貸借契約を解除できるのは、「その当事者である賃貸人であって保証会社ではない」、「無催告で解除権を行使できる点において、消費者である賃借人の権利を制限するもの」と断じた。借家人の権利を保護する借地借家法の立法目的からは極めて妥当な判決だ。これにより、賃借人への「催告」が非常に重要となる。全国賃貸保証業協会顧問弁護士の中島成氏は、機械的に保証会社が賃料の代位弁済をしてしまうと、それによる賃借権の解除はできなくなる可能性が高くなったと言う。同氏は、「まず賃貸人に賃料支払い催告をしてもらい、それでも弁済がない場合に初めて代位弁済をするなどの工夫が求められる」という。また、今回の判決を受けて保証会社に解除権を認める条項も導入すべきでないとする。多くの事業者で見直しの必要性が出るのではないか。

 これまでの実務慣習や経済効率判断からはややかけ離れた最高裁の判断と、もどかしく思われる当事者もいるだろう。しかし、法令を順守した適正な事業を行うことは不動産事業者の務めである。迅速な対応が求められている。