今回から全12回、半年にわたって、売買仲介の新人の方々に向けて、不動産の取引の流れや定義の理解、各書類の読み方、現地調査など、各業務の項目ごとに(1)目的、(2)やるべきこと、(3)最低限抑えるべきこと、この3つのポイントを実務者の視点で書かせていただく。
紙数の関係もあるので説明が不足することがあるかもしれないが、これさえ把握しておけば大きな失敗とはならないポイントは外さないようにしていくので、最後までお付き合いいただければと思う。 ◇ ◆ ◇ ◆
初回は売買仲介に対する姿勢についてだ。大きなトラブルを起こさないためにも、外せないポイントだ。
ポイントは大きく3つ。
1つ目は「必ず自分で確認すること」、2つ目は「納得するまで確認すること」、3つ目は「関係することはすべて確認すること」、この3つとなる。
1つ目の「必ず自分で確認すること」は、売買仲介の根幹となる姿勢だ。自身で確認をしたことなら、間違えることが少なくなるし、ないものはないと言い切れる。また、責任も取れる。
例えば、所有権の確認もそう。自身で登記済権利証(登記識別情報通知書)や市役所等で名寄帳を閲覧して、どの筆(不動産の単位)を所有しているかを確認するのは重要だ。筆者も過去、相続登記後の登記識別情報通知書を信用して売買契約を結んだら、附帯物である物置の所有権が相続登記から漏れていたことが発覚して大慌てになったことがある。相続登記をした司法書士のチョンボなのだが、自身も事前に名寄帳などを取得しておけば防げた事故だった。
その他にも書類や調査、説明の確認など、時間が許す限り、できるだけ自身で行ったほうがよいだろう。
2つ目の「納得するまで確認すること」は、売買仲介や顧客への説明に自信をもって臨むために不可欠だ。「間違いないです」という姿勢がよい取引を生むと思う。
例えば、調査をすると未登記だったり、越境などすぐには分からない事柄はよく出てくる。それをよく分からないとするのではなく、手間暇をかけて突っ込んで調査をして明らかになった事柄はよし、それでも不明なら不明とすればよいだろう。
3つ目は「関係することはすべて確認すること」だ。無用の用という言葉があるが、関係が薄い、一見関係がなさそうなことでも「あとでやっておけばよかった」となることは、売買仲介にはよくあるからだ。多少でも関係するならしっかり確認をしておきたい。以上基本姿勢だが、次回からは各業務に触れていく。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント、武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年から相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動し、現在に至る。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。
著書に約8万部のロングセラー『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)など7冊。『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。