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スポーツ施設をワークプレイスに 野球場とゴルフ場が〝働く場〟 不動産企業が新たな提案

 不動産企業によるスポーツ施設をワークプレイスとして開放する動きが出始めている。背景には働き方の多様化が定着しつつあり、オフィスワーカーへのサービスの充実といった側面に加え、利用する時間や時期の変動が大きなスポーツ施設の効率的な利用が挙げられる。野球とゴルフという2つのスポーツでの事例を取り上げる。 (桑島良紀)

グラウンドでフィットネスも

 4月20日・21日・26日・27日・28日の5日間、8時~14時に、東京ドーム(東京都文京区)がオフィスとして開放された。三井不動産は、法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」会員に対して、東京ドーム内にある1塁側のプレミアムラウンジを無料で利用できるようにした。初日、用意された約30席は満席となった。また、朝の30分間ではグラウンドに降りて、ヨガやピラティスといった無料フィットネスプログラムが行われた。

 プレミアムラウンジでは、Wi-Fiの利用や電源、コーヒー、水が提供され、充電器なども無料で貸し出された。プレミアムラウンジ内の野球観戦用の席も利用でき、整備中のグラウンドを眺めながら仕事をする利用者の姿も散見された。

 同社は、今回の取り組みについて、非日常的な空間で働きたいという要望に応えたものだとしている。東京ドームのリニューアルにより、設備が新しくなったこともオフィスとしての利用が可能となった背景にある。ビルディング本部ワークスタイル推進部の高木諒平主任は、「仕事として利用するために、Wi-Fiのセキュリティレベルを高めた」としている。

 同社では、オフィスとしての一定水準をクリアできれば、多様な選択肢の提供の一環として様々な施設のオフィス化を検討するという。

大手企業も会議や研修

 森ビルは、ゴルフ場を使った新たなワークプレイスの提供を行っている。同社グループの静ヒルズカントリークラブ(茨城県那珂市・常陸大宮市)は21年4月、ゴルフ場のホテルでリモートワークを行い、オフタイムにゴルフのラウンドや練習が楽しめるプラン「Golf in life! ゴルフ場のホテルでリモートワーク」を開始。オフィス品質の通信速度やセキュリティも確保している。

 利用者からは「平日のゴルフは今まで諦めていたが、このプランのおかげで仕事にも趣味にも没頭できた。また利用したい」「Wi-Fiも速く東京にいるときと同じくらい快適に仕事ができる。目の前がゴルフ場で気分転換にもなる」など、前向きな評価を得ている。

 一方、ゴルフ場のレストランでの昼食・夕食の価格帯が少し高めということもあり、気軽に利用できないとの声が一部であった。現在は、ホテル1階に「NO NAME CAFE」がオープン。カジュアルに飲食や交流を楽しめるようになっている。

 更に、同年6月には、スノーピークビジネスソリューションズと提携し、ゴルフ場の自然を感じながら開放的なテントで研修や会議、仕事ができる施設「CAMP OFFICE IBARAKI・SHIZU」をオープンした。コロナ下においても、開放的な空間で安心して対面コミュニケーションが取れる環境が特徴だ。

 同社によれば、大手自動車メーカーの幹部会議やITコンサル系企業の新人研修など、幅広い業種と目的で活用。利用者からは、「アウトドアで行うミーティングでは非日常を感じ、いつもと違う感覚から新しい発想が多かった」「たき火を囲むことで普段はできないような濃密なディスカッションができた」など、満足度は非常に高いと評価する。

 同社ではゴルフ場のホテルの長期滞在プランとして、サービスアパートメント化やコワーキングスペースのサービス化を検討、利便性の高いサービスを目指すという。