住まい・暮らし・文化

木造賃貸の高品質化促す 検索サイトで「マンション」登録可能

 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の理事会社であるリクルート、アットホーム、ライフルは昨年12月6日から、運営する検索サイトで、一定の基準をクリアした木造の共同住宅(賃貸住宅)を「マンション」登録可能とした。木造賃貸はそれまで「アパート」登録であり、「マンション」よりも低く見られるのが現実だった。耐久性、耐震性、耐火性など一定の基準を設け、「マンション」登録を可能とすることで、木造賃貸の高品質化を促す狙いがある。3社を中心に基準設定が進められたが、中心的な役割を担ったリクルートの不動産・住宅情報サイト「SUUMO」編集長の池本洋一氏に取り組みの背景や展望など話を聞いた。(聞き手=古賀和之)

 ――木造の共同住宅を「マンション」登録可能とした背景を教えてほしい。

 「大手ハウスメーカーや賃貸住宅の建設者など業界には様々な技術革新があり、更に、国も木材を利用していこうという方針、カーボンニュートラルの流れがある。それらが相まって、木造というだけで『アパート』的なものと決めつけるのはよくないということを考えていた」

 「技術の進展があるにもかかわらず、木造という種別・構造を選んだ瞬間にポータルサイトで『マンション』表示ができないというのは見直してほしいという要望が建設サイドから入った。ポータルサイト側でも改めて評価を見直すべきであり、時代は変わっていると感じていた」

 ――検討開始時期は。

 「改正木材利用促進法が21年10月1日に施行されたが、それ以前から検討は重ねていた。ハウスメーカーや賃貸のビルダー各社からの要望を把握したのは20年12月であり、検討の本格的な開始は21年1月だ。各社のサイトは消費者から見れば横並びで情報が表示されるもの。基準がそろってないのは不義理であり、対ユーザーでなんらかの基準を設けるのが誠意だ」

 ――「アパート」だと、「マンション」より劣るというイメージがある。

 「実際、そういうイメージはある。登録の規定変更に当たり、ユーザー調査を行った。『マンション』のほうが質が高いと見ており、木造だと分かった瞬間に『アパート』と捉えるユーザーは多い。ただし、地震でも倒壊しづらい構造、耐火構造、耐久性の高さ、3階建て以上など、一定の性能・規模を有していると、『マンション』と捉えている。それは想定していた以上に多かった」

金融サイドも見据え

 ――耐久性能や耐震性能、耐火性能といった要件はユーザー調査を踏まえたのか。

 「調査結果をベースにしながら業界と協議した。住宅性能評価の設計住宅性能評価書の取得、劣化対策等級(構造躯体等)の等級3を必須とした。劣化対策等級3は金融機関サイドの評価を参考にした。賃貸住宅がRC造の場合、減価償却期間は47年。融資は期間30年や35年で提供できる。木造の減価償却期間は22年であり、RC造と同じ期間の融資を受けるのは難しい。ただ、劣化対策等級3を取れば、期間30年や35年で融資する金融機関は増えており、金融機関サイドの姿勢の変化を加味した」

 ――今後の影響をどう見るか。

 「住宅性能評価の普及につながり、一定の基準を超えた物件であるというエビデンスを消費者が得られる。オーナーも融資が受けやすくなり、『マンション』登録で入居者が集めやすくなる。結果的に日本の賃貸住宅の底上げになるのでは」

市場の育成へ

 ――高品質な木造賃貸が普及していくには何が必要か。

 「消費者の評価が一番重要だ。比較的高い家賃でも借りてもらえるマーケットにしなくてはいけない。これまで駅からの距離、広さ、築年数だけで家賃が決まっていた。そこに、品質のよさ、快適性、安全性を家賃に加味する。これができると金融サイドの融資姿勢が変わる。コストを維持・低下させながら、高品質な木造賃貸が供給できる体制や技術革新も大事だ」