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住宅新報家賃調査 東京圏 横ばい傾向も上昇地点多く 不動産DXの進ちょくは二極化

 住宅新報が年2回実施している4大都市圏家賃調査がまとまった。昨年秋の調査では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続いていて、テレワークがしやすい環境を求める人が多くなった。ただ、賃料自体は横ばい傾向だった。それから半年が経過し、3度目の緊急事態宣言が出るなど、コロナの影響はまだ続いている。果たして、賃貸の現場はどうなっているのだろうか。(詳細賃料は12~13面。三大都市圏は5月18日号に掲載予定)

 東京圏のマンションの平均成約賃料はワンルームタイプが7万4069円で前回調査(20年9月1日時点)比0.5%プラスとなった。1LDK~2DKタイプは10万9926円で同0.25%プラス。2LDK~3DKタイプは13万7194円で同0.27%プラス。マンションはすべてのタイプで上限価格、平均価格、下限価格が上昇したが、これは需要が集中した物件の上昇が局地的に見られたことによるもので、築古物件を含めた市場全体では横ばい傾向が続いている。

 アパートの平均成約賃料は、1K~1DKタイプで6万4610円で同0.50%プラス。2DKタイプが8万7870円で同0.54%プラスといずれもわずかながら上昇した。アパートについては、上限、平均、下限ともいずれのタイプも上昇したが、特に下限の上昇幅が高く、全体を底上げしている。

来店客は減少

 今回の調査では、家賃のほか、「現在の市況」と「重説書・契約書IT化など不動産DX進ちょくの流れ」についても意見を聴いた。

 市況全体としては、店舗への来店客が減少している傾向にあることが分かった。部屋探しにオンラインを活用している客が増えていることと、対面メインの店舗のため、客足が離れている店舗があり、その2つが相乗して来店客が少なくなっているようだ。「駅前店舗のため、比較的来店者数はあるが、コロナ禍以降、ふらっと立ち寄る客は減った印象」(東武伊勢崎線西新井駅)。「来店客は減少。一方でオンラインを生かした部屋探しが増加した。対面時間を極力減らすよう、内見物件での集合・解散などの案内も増えた」(同草加駅)。

 不動産DXについては、ITによる内見、重要事項説明などを積極的に取り入れている宅建業者も多くなり、非対面で案内する方法にも慣れてきたとする店も増えてきた。一方、全くオンライン化が進んでいない店舗もあり、二極化している。

 「自宅に居ながらの部屋探し・手続きを推奨している。秋繁忙期よりも手応えをつかんできた感覚はある」(京王線多摩センター駅)。「ファミリー層では、当社の分譲タイプで空きが出た際はすぐに決まっている。郊外需要および企業側の動きが回復してきたようだ。通年で見ると、来店客が減った。本社で進めるオンライン対応の成果もあるが、非来店で住まい探しから契約までという動きを感じる。コロナ収束後も対面案内とオンライン対応の併用パターンになると思う」(同駅)。「遠方客はオンライン内見だけで契約する人もいるが、近場の方は内見するし、こちらも実際の内見を勧めている」(JR総武線本八幡駅)

「IT重説は増えた。こちらからも推奨している。オンライン内見も増えたが、それだけで契約する客はまだ少ない」(同線西船橋駅)。「学生が多い街なので、ITに慣れており、内見や重要事項説明も非対面でもスムーズに行っている」(JR常磐線北千住駅)。

湘南エリアは人気に こうした中、一部地域では需要が高まっている。それは、神奈川県湘南地方だ。「コロナで横須賀は追い風だと思う。都心から移ってきた人は目に見えて多く、都内まで電車で1時間程度という立地でニーズが高い」(京浜急行横須賀中央駅)。「この1年、問い合わせがかなり増えたほか、成約も多く物件が足りない状況。それに乗じて募集賃料を上げる動きも一部で見られる。広く高級な物件から決まり、ワンルームタイプなどは動きが少なめ」(JR東海道線藤沢駅)。「都心からのカップルもしくはファミリー層の客がかなり増えた。単身者はあまりいない。それによりワンルームタイプよりも1LDK~2LDKのニーズが高い」(同線茅ヶ崎駅)。

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 インド型のような強力な変異株も現れ、新型コロナウイルス感染症の影響は今後も続きそうだ。対面での営業、契約が難しくなっている現在、二極化しているIT化・不動産DXをより進めていく必要がある。時あたかも、デジタル化関連の一括法案整備の検討が進み、今国会での成立が予想される。賃貸仲介業には今、新しい風が吹いている。