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社説 この一年を振り返る 課題山積も未来へ

 2019、令和元年が間もなく暮れようとしている。ここ数年、住宅・不動産業界は激しい波にもまれてきた。AI・IoT機器の普及により業態や労働環境も変化した。その流れは今年も加速している。賃貸借契約の電子化・社会実験はまさにその代表だろう。来年以降、宅建業法などの改正も行われる可能性がある。

 今年の大きな出来事といえば、消費増税の実施だ。住宅・不動産業界においては、政府が次世代住宅ポイントの発行など施策を講じたことで、駆け込みとその後の反動をある程度防ぐことができた。ただ、物件供給が少ないマンションでは駆け込みも起きず、反動もない低調な動きが続いているほか、ハウスメーカーでは、駆け込みはそこそこあったものの、反動減が11月まで続いている。また、総務省調べでは、10月の家計支出は前年比で5.1%減と11カ月ぶりに減少しており、増税の影響も出ている。政府では主に災害復旧を柱とした26兆円の経済対策を打ち出したが、場合によっては景気対策に振り向ける必要がある。

 そして、台風や豪雨が何度も日本を襲った。主なものだけでも、8月の九州北部豪雨、千葉県を襲った台風15号、首都圏、甲信、東北に被害をもたらした台風19号を挙げることができる。台風だけではない。相変わらず、全国各地で震度5弱以上の大きな地震が起きている。まさに恒常化、日常化している大災害にどう対応していくか。喫緊の課題となっている。

 住宅・不動産業界では、これらの災害でいくつかの示唆を得た。まずは、住宅購入予定地の危険度を確認できる「ハザードマップ」。国土交通省では、7月に業界団体に対し、情報提供するよう通知した。現在、宅建業法上の重要事項説明書には入っていないが、省令など規定の改正も考えられる。

 また、「マンションの地下水没」「タワーマンションの地下設備の浸水」も土地仕入れに苦労している業者にとって危惧される点だ。早速、政府も検討会を設置し、来春には対策指針がまとめられる。

 さて、今年最も大きな出来事は、やはり令和への改元だ。これに合わせ、国土交通省は「不動産業ビジョン」を4月に策定した。新たな時代への期待を込めたものだ。これを受けて、業界団体の中でも最も会員数が多い全国宅地建物取引業協会連合会は、既に立ち上げた「ハトマークグループ・ビジョン」を進めている。また、全日本不動産協会は「中期ビジョン」をまとめた。いずれも軸は「不動産業ビジョン」と同じ。安全安心な取引を目指すとしている。両団体の積極的な姿勢に期待したい。

 現在、業務の透明化などビジョンの実践、AIなどへの対応、需要を起こせるような住まいづくりなど、住宅・不動産に携わる人にとって難題は山積している。しかし、少しずつでも解決し、明るい未来をつくり上げたい。