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大言小語 未来は存在していない

 若い人たちの間では不動産投資熱が高まり続けているようだ。国民生活センターに寄せられる投資用マンションに関する相談件数が全体では減少傾向にあるのに20歳代の若者からの件数は逆に増加。直近の5年間では約2.5倍にも増えている(本紙4月16日号1面)。

 ▼背景には、「社会保障や老後の生活など将来的な不安を感じ取っている若者が増えている」ことがあるという。しかし、それが事実なら、なんとも強い違和感を覚える。20代といえば、人生80年としても(今の若者が80歳になるころの平均余命はさらに10年ぐらいあるのではないか)人生の入り口にようやく立ったかどうかという年代である。60年以上も先の不安を今から感じとっているのだろうか。

 ▼そもそも将来をそのように不安な社会と規定してしまうことに何の意味があるのだろうか。若いということに価値があるのは、将来が無限の可能性に満ちていることだろう(実は老いても無限の可能性があるのだが)。自分の人生の将来は、まだどこにも存在していないというのが人生というものである。

 ▼脳科学者の茂木健一郎氏は「感動する脳」という著書の最後を次のように締めくくっている。「人はみんな、本来はもっと大きな可能性を持っている。(中略)生き方は決して一つではない。自分の人生にもいろんな生き方がある。そういう気持ちを持ち続けることが大切だ」。