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大言小語 他人同士の経営統合

 これは個人事務所や数人規模の会社が大半を占める不動産鑑定業界だけでなく、中小企業一般が体質強化を図る一つの選択肢でもある。12月1日付で共に東京に本拠を置く九段都市鑑定(堀内智代表)と緒方不動産鑑定事務所(緒方瑞穂代表)が、持ち株会社「九段緒方ホールディングス」を設立して経営統合した。代表には双方の次代を担う奥田かつ枝氏と中尾彩子氏が就任した。

 ▼不動産鑑定士は難関資格の一つで、弁護士や公認会計士などと同様の「士」業。大手機関や先輩の事務所で修業を積んだ後、独立。そして協業化や会社化して業容を拡大していくのが大きな流れだが、残念ながらこれまで基盤の強い協業化組織や会社組織は余り生まれてこなかった。今はちょうど人口減少社会や、IT・AIによる構造変化の只中にあり、将来の事業環境に備えるときでもある。

 ▼資本金は共に2000万円で事業規模も類似し、顧客層が重複しないことも後押しした。九段都市鑑定は旧日本債券信用銀行系であり、緒方事務所は独立系だが、緒方氏が日本不動産鑑定士協会連合会会長を務めるなど、鑑定業の在り方などで議論をリードしてきた存在でもある。

 ▼その両社が資本や地縁、血縁などと関係なく選択したのが持ち株会社。これは「他人同士」の中小企業が手を結ぶ、新たな生き残り策として注目される。期待したい。