新しい年を迎えた。住宅・不動産業にとって新たな需要を掘り起こし、活力に満ちた1年になることを願いたい。
昨年の業界をふり返ると、一部で減速した分野はあるものの、企業業績は全般的に順調に推移した。不透明感はあるが、当面大きな落ち込み要因は見当たらない。課題は中長期的な需要予測と事業計画をどう描いて進めていくかである。
我が国が直面する最も大きな課題は、高齢社会に突入し、これから人口減少が本格化するかつてない構造変化を迎えることである。業界の事業の柱で、社会的存在基盤でもあった住宅供給が今後、縮小へ向かうことは避けられない。既に全住宅総数の13%、820万戸も空き家がある状況は、事業構造をストック活用型に転換するときの到来を指し示している。
それは、流通やコンサルタント、リフォーム、リノベーション、更に管理・運営や暮らし利便サービスといったソフトサービス分野が住宅産業の柱となることを意味している。25年には「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となるなど、この先数十年は需要のボリュームは住宅ローンを組んで購入する若者層よりも、中高年齢層の方が上回る時代が続くのである。住宅・不動産業が活力を維持する方策が従来の延長線上にないことは明白だろう。
民間の知恵生かそう
我が国は高齢社会問題では〝世界のフロントランナー〟である。政策はもちろんだが、産業界や地域団体などがどう対応し、実践できるか。この問題はこれから都市問題そのものとなる。民間の知恵が必要なときである。
高齢社会を象徴するのが医療・介護と住宅の問題だ。医療・介護は地域包括ケアシステムと健康寿命の延伸が政策の柱である。一方、住宅は、サービス付き高齢者向け賃貸住宅(サ高住)の供給を推進中だが、それで問題解決とはいかない。シニア住宅に力を入れる企業が増え、ヘルスケアファンドも登場したが、多くは富裕層向けで、一般国民の経済的負担能力とかけ離れている現実がある。
住宅・不動産業界には住宅に関する様々な機能とノウハウがある。それなのに、高齢単身者が比較的元気なうちから住み、助け合うことが可能な住宅や、年金暮らしに対応する住居やシェアハウスが少ないのはどうしたことか。元気でも高齢者が賃貸住宅へ入居する際の条件、ハードルは高いままだ。若者よりはるかに厚みのある需要に対する取り組みは十分とはいえない。こうした需要構造は今後なお数十年は続く。幸い、住宅・不動産業界各社の業績は比較的堅調さを保っている。余力のあるうちに、独自の視点で新たな事業を育て、競争力のある商品サービス作りを進めてもらいたい。それが環境の変化を切り開く道である。