政策

社説 〝民泊新法〟方向固まる 家守り・地域守りの使命重い

 〝民泊新法案〟に向けた国の方針ともいうべき「民泊サービスのあり方に関する検討会」(厚労省・観光庁共催)の報告書がまとまった。一定の条件のもとで、住居専用地域でも営業を認めるなど大胆に規制緩和する方向だ。そのため、住環境の破壊につながるのではないかといった懸念が表明されている。

 そこで、特に問題が多いとされる家主不在型(空き家)を活用するタイプでは、家主が為すべき管理業務を代行する「管理者」の設置義務が課されることになった。同新法が健全に機能し、社会的認知を受けるためには、同管理者の役割はきわめて重い。

 同管理者には一定の講習を受講した旅行業者や宅建業者が想定されている。そこで、新たなビジネスチャンスとも目されるこの「民泊管理者」業務を担う宅建業界に期待したいのは、大前提として「ストック活用には公益性が必要」との視点である。空き家を地域の資源と捉え、地域に最もふさわしい活用方法を考えることこそ、地域に根差した不動産会社の社会的使命だからである。

 つまり、管理者業務を担うに際しては、まず、その物件が本当に民泊としてふさわしい条件(特に立地、環境など)を備えたものであるかどうかを公益性の観点から判断してもらいたい。つまり、最初から〝民泊ありき〟ではなく、シェアハウスや、デイサービス、地域のコミュニティ拠点など多様な活用方法の中から最もふさわしい用途を探索し、それを空き家所有者に提案していただきたい。当然、中には民泊がベストとの結論もあるはずである。

 折しもこのほど、全国宅地建物取引業協会連合会と全国宅地建物取引業保証協会が発行した「16年度空き家対策等地域守りに関する調査研究報告書」(RENOVATION2016~新しい不動産業を目指して~)には、空き家を地域の価値を高める貴重な資源と捉え、地域再生に取り組む全国宅建業者の活躍ぶりが紹介されている。ストック時代を迎えた今、不動産業界最大の使命は地域を衰退や、住環境の破壊から守ることである。

 民泊を規制緩和する論議は、もともとは外国観光客の宿泊施設不足が発端であり、そこに、増加する空き家対策としての観点が加えられることになった。つまり家主不在の空き家が民泊供給の主たる担い手となるべきものではない。まずは、問題の少ない家主居住型の活用が主であるべきだし、それに準じた機能を持つとされるシェアハウス型民泊などの検討がなされるべきものである。そのうえで、「管理者」による厳しい物件選考をパスした家主不在型住宅(空き家)の供給を促すべきである。