政策

社説 消費税10%増税が再延期 新築と中古の公平な税制を

 世界経済が大きなリスクに直面していることを理由として、消費税率10%への引き上げ時期が19年10月に再び延期されることがこのほど正式に発表された。時間的な余裕が生まれた次の増税期限までの間、良質な新築住宅の供給と中古住宅の流通活性化を共に促進するバランスのとれた住宅税制の在り方について根本から見直す機会とするべきだ。

住宅市場にゆがみ

 増税先延ばしが二度にわたり、増税を財源に社会保障を充実させる公約が半ば宙に浮くこととなっただけでなく、経済見通しの甘さにも政権批判が噴出し、再延期に対する賛否は分かれる。一方、業界を挙げて要望した軽減税率導入が見送られた住宅市場では、需要者も事業者も共に想定内としてほぼ冷静に受け止めているようだ。

 8%への増税においては、駆け込み需要の高まりとその後長期に及んだ反動減が生じ、住宅市場に大きなゆがみをもたらした。10%への増税を控えた今年は、駆け込み需要が表面化したという気配は見られず、需要を喚起するほどの影響は出なかった。このことは、住宅の消費税率引き上げがそろそろ限界近くにきていることと、住宅税制全体の在り方も問われる時期にあることを示唆しているとみてよいだろう。住宅にかかわる消費税率の適正な水準や、その他の住宅税制とのバランス、新築と中古の特性などを鑑みて、税制全体を総点検するべきだ。

市場とミスマッチ

 国民生活の基盤であり、多重課税といった特殊性がある住宅の税については、かねてから抜本的見直しの必要性が叫ばれてきた。近年は、住宅が社会的資産として位置付けられるようになり、抜本的見直しの声は根強い。また、スクラップ・アンド・ビルドから優良ストックの流通促進へと住宅政策が大きく転換を見せた一方で、政策と税制の間に矛盾も生じてきている。現行税制の多くは住宅不足から高度経済成長期にかけて供給拡大に重きがおかれた時代の制度を受け継いだものであり、かつ政策転換後の税制がどう変わるべきかという議論も実質的になされてこなかったからだ。

 住宅政策は、耐震や省エネといった点で質の高い住宅が市場に供給、蓄積され、そうした良質なストックの流通促進を目指している。当然、建築コストの高い住宅の供給が必要となるが、これに消費税の負担が重くのしかかる。一方、個人間売買での中古取引では消費税は課税対象外となる半面、事業者が介在する買い取り再販では課税対象とされる。

 消費税だけを見ても市場と制度のミスマッチが生じており、そうした弊害を最もこうむることになるのは生活者だ。再増税までの時間は短い。国民生活という原点に立ち戻り、住宅税制の見直しに着手するべきである。