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大言小語 地方復活のアイドル、さらば

 06年、南海電鉄貴志川線(旧)は廃線の危機を迎えていた。地元の人たちが立ち上がり、ある電鉄会社に運営協力を依頼。地元自治体、住民が経営委員会を作り、沿線住民の声を届ける仕組みを作った。そして、路線復活の立役者が現われた。人が来た。沿線の名が世界に知れ渡った。その功績で社長代理に上り詰めた後、静かに天国に旅立った。スーパー猫「たま駅長」、16歳(ヒト80歳)だった。

 ▼今、叫ばれている「地方創生」の先駆者と言えるだろう。ただ、この成功はたま駅長がいてこそではあるが、それだけではない。地元の人たちの勝手連的な取り組みがあってこそだ。トップダウン型だと、うまくハマれば成功するが、合わないと、地元の人は疲弊してしまう。

 ▼和歌山電鐵貴志川線は、ボトムアップ型に近い。もちろん社長の小嶋光信氏のアイデアなどトップダウンの経営もあるが、たま駅長というアイドルがまさに触媒となって、うまくぶつかり化学反応を起こして、成功した。最近はストレスを与える観光客もいたが、二代目が業務(接客)を代行するなど、常に駅長の体調をみんな気遣っていたという。

 ▼海外にもファンが多く、ドバイのテレビ局では、「tourist magnet, cat 」死去と報じた。就任1年で10%以上利用者を増やした、たま駅長。売店の飼い猫から出世した彼女も、天国では一匹の普通の猫として遊んでいることだろう。