政策

社説 空き家解決に一助 手数料アップ、考えてみては

 自民党は、秋の臨時国会に「空き家対策特別法」を提出する予定である。建物があれば軽減されている固定資産税の優遇措置の撤廃や、指定されれば市町村による強制執行による除却も視野に入れ、空き家の増加に歯止めをかけようというものだ。こうした対策に大いに期待したいが、民間からも一助になる方策があるのではないだろうか。

40年以上変わらず

 例えば不動産仲介手数料の引き上げである。現在200万円以下については5%、200万円を超え400万円以下の金額については4%、400万円を超える金額は3%、これにそれぞれ消費税をプラスした額が上限となる。仮に200万円の建物であれば、10万円プラス消費税となる。

 この報酬額の上限は、消費税額を除き、70年以来40年以上変わっていない。下がり続けてきた地価が回復傾向にあるとはいえ、地方の土地は値上がりしているのはごく一部である上、絶対的にも金額が高いといえない。とりわけ別荘地は問題だ。軽井沢など人気のある一部のエリアを除き、地価は上昇していない。売り出されている物件をみても、200万円を下回るものは山のようにある。坪当たりにすれば1万~2万円程度だ。

 仲介手数料が少額であることは、購入者にとっても売主にとってもいいだろう。しかし仲介をビジネスにしている側にとっては、どうだろうか。広告費や人件費を考慮すると商売にならないケースも出てくる。売主が売却しようと不動産業者に依頼しても、広告などに費用はかけられないし、埋没したままになってしまっているのが実態ではないだろうか。

上限ではなく下限も

 問題となっている空き家の増加も、売るに売れないまま放置されているケースが一因になっていることも考えられる。もちろん手数料を上げたからといって、その不動産が持っている価値は変わらないから、空き家問題が解決することはない。

 しかし手数料が上がれば、全く商売にならないという理由で取り合ってももらえなかった物件が、流通市場に出てくる可能性は高まる。投資家や、新たなビジネスを考えている人による価値創造の機会も創出されよう。

 手数料引き上げには、消費者目線から反論もあろう。また仮に引き上げるにしても、どの程度が妥当なのかは議論しなければいけない。「空き家対策法」で空き家として定義され指定された不動産に限って、手数料を見直してもいい。この場合、500万円など低い物件については10%にしたり、更には下限を引き上げることも考えられよう。空き家は恒久的な問題である。不動産業界の取り組みの一つとして検討してもいいのではなかろうか。