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社説 最高収益相次いだ3月期決算 着実な成長への出発点に

 主要住宅・不動産会社の14年3月期連結決算は、住宅事業が消費増税の駆け込みなどで好調だったことで、リーマンショック前の最高収益を更新する企業が相次いだ。各社が取り組んできた経営基盤や収益構造の強化策や、多角的な事業展開が成果を上げたことは確かだが、今回は様々な外的要因が好業績を後押ししたことも大きい。

 住宅では消費税だけでなく、金利や建築費、地価上昇気配に伴う駆け込みと、15年からの相続増税対策の動きが顕在化したことも重なった。また、Jリートなどの投資市場も活発し、かつてない恵まれた環境にあったといえよう。

 問題は今年度以降の展開。消費増税の駆け込みに伴う反動減は、97年の前回増税時の轍を踏まないよう、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金制度の創設が措置されているが、注文住宅の受注や住宅着工の減少傾向をみると、先行きは必ずしも楽観できない。

 また、マンション事業では各社とも完成在庫をほぼ一掃し、今年度以降に計上する契約残を相当数確保した。事業の先行きは安泰に見えるが、市況の好転が逆に用地取得の競争激化を招き、高騰する建築費と共に事業の高コスト化の要因になった。一方で、需要者の所得は伸び悩み、価格上昇が市場を一挙に冷やしかねない状況もある。しかも今後、人口減少社会を迎えるなど、住宅・不動産事業も構造的な難しさを抱えている。

企業の将来像を描く

 それを踏まえた上で、10年程度先を見越した中長期経営計画を策定する企業が増えてきた。将来の企業像を描きながら、より具体的な3年計画と並行させ、着実な事業体制の整備と業績の伸長を図るものだ。一般に、今後の成長分野として挙げられるのは高齢者市場と海外市場だ。需要の伸びや市場の広がりではその通りだが、住宅・不動産企業すべてに当てはまるものではない。企業によって規模の大小もあれば、専門得意分野や、今後強化したい分野も異なる。自らの強みを生かし、新たな分野に挑戦する姿勢こそが成長する企業に求められるものだろう。

 例えば、高齢化と人口減少社会。既にその時代を迎えているが、そのおかげで逆に需要が増大する商品サービスがたくさん出てくることを抑えておく必要がある。代表的なものが「高齢者住宅」だ。住宅・不動産分野からも様々なアプローチが始まっているが、まだ踏み込み不足の気がしてならない。医療・介護の分野との連携が必要なのはもちろんだが、住宅分野独自の視点からとらえた快適で安全安心な、元気な高齢者のための様々な住宅への提案がもっとあっていいのではないか。

 その意味で今回の好決算は、新たな動きを後押しする格好の推進力となる。各社が得意とする基盤事業を核に、新しい事業に挑み、成長の芽を育てていく。将来的に成長軌道を描く体制を整えるための出発点としたいものだ。