総合

大言小語 時を糧に

 宅建試験が終われば、今年もあと2カ月余。月日の流れがあまりに早いのは、ただ漫然と生きている証か。流されるのではなく、踏みとどまり物事の本質を見据えなければ、充実した〝時〟は流れない。

 ▼小さい子供は、見知らぬ大人の顔をじっと見る。「あなたは何者なのか」と問うように。見られた大人は、自らがカラッポだと戸惑い、目をそらす。充実した時を過ごしてきた本来の大人であれば、優しい眼差しで答えることができる。「君には、まだ分からないさ」と。

 ▼「ストック時代」の到来が叫ばれる。しかし、「いきなり、そう言われても」と戸惑うストックも多いのでは。古くなってから味わいが出るように、最初から作られていてこその話ではないかと。それはともかく、今からでも努力しよう。成熟化していく日本の未来にこそふさわしい、息の長い住宅の供給を目指して。

 ▼ストックを甦らせるのは「リフォーム」か「リノベーション」か。明確な定義がないのであれば、この際ハッキリさせよう。リフォームは普通の改修・補修。リノベーションは建て替えに頼らず、未来に良質なストックとして残れるよう、今の住まいに新たな価値を吹き込む技術。ただ時間を消費するのではなく、時を糧にするという武器を住まいに与えることができるリノベーション。物の本質を見据えなければ、生まれてこない技術である。