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大言小語 「見ぬふり」は許されない

 昨年10月、滋賀県大津市で男子中学生が飛び降り自殺をした。そして、今年の3月、全国最年少の女性市長である越直美大津市長は、自らのいじめられた体験を交えながら、自殺した中学生が在籍していた学校の卒業式で、涙ながらにいじめ撲滅のあいさつをした。今思えばまるで幕引きを迎えたいかのように。

 ▼納得できない親が市と一部の生徒の親を相手に民事訴訟を起こしている中、自殺した生徒に対して「自殺の練習をさせた」「死んだ鳥の死骸をくわえさせた」など筆舌に尽くし難いいじめの実態を訴える全校生徒のアンケート結果があったにもかかわらず、市の教育委員会が、「いじめの事実を直接見ていない」として、公表していなかったことが分かった。また、「教師も見て見ぬふりをしていた」という回答を隠していたことも。そればかりか、被害者の親が警察に被害届を出そうとしたのに、地元の警察は3回も受理を拒否した。

 ▼加害者側にも人権はあり、ましてや中学生のため、慎重に対応する必要はある。しかし、人命が失われている。越市長はようやく、再調査を命じたようだが、この隔靴掻痒的な、何とも言い難い動きの鈍さは何だ。あるべき対応は実は簡単だ。教師・警察・行政、すべてが被害生徒の立場になり、その無念さを考えれば、方向は自然と定まる。翻って不動産の世界にもみて見ぬふりはないだろうか、自戒したい。