政策

社説 22年都道府県地価調査 上昇転じるも懸念材料が

 22年都道府県地価調査が発表された。全用途平均は3年ぶりに上昇に転じ、住宅地においては31年ぶりに上昇、商業地も3年ぶりに上昇した。国土交通省地価公示室によれば、「新型コロナウイルス感染症の影響などにより弱含んでいた住宅・店舗などの需要が回復傾向にあり、地価動向は住宅地・商業地共に上昇に転じた。住宅地では、東京圏、名古屋圏、地方四市などを中心に、地価の回復傾向が全国的に進んだ」という。

 特に住宅地の中で特徴的なのは、「東京都中野」「茨城県つくばみらい市」「北海道北広島市」だ。中野は現在、区役所新庁舎整備事業などの再開発が行われており、利便性の高い地域として地価が上昇した。つくばみらい市は、つくばエクスプレス線沿線で住環境が良好な新興住宅地があり、転入者も多く、住宅需要が堅調なことから地価の上昇が継続している。北広島市は、札幌市内の供給不足に加え、ボールパーク開業に向けた宅地需要の増大が認められ、広範囲に需要が波及しており、地価上昇が継続しているという。

 商業地では、人流が回復傾向にあり、高層複合施設の開発も進展している「新宿区歌舞伎町」、多機能複合型都市として整備中のかずさアクアシティがある「千葉県木更津市」、国内来訪客が回復傾向にある「台東区浅草」などが特徴的だ。なお、上昇率でみると、住宅地のトップ10は北広島市などすべて札幌市周辺。商業地も、6位の木更津市を除くとすべて北海道というのも特筆される。

 地価公示室の分析では、「コロナ禍からの回復もあるが、(上昇はしていなかったが)下落率が縮小傾向にあったトレンドの結果、徐々に戻ってきたという理由が大きい」という。今後については言及はないが、全体的な傾向として上昇ベースにあると思われる。

 ただし、懸念材料があることは否定できない。まず、地価調査が22年7月1日時点となっていることだ。つまり、コロナ第7波の影響については対象外。予測される第8波がどれほどの影響をもたらすのか不安材料となる。

 また、現下の不動産取引状況などを見ると、新築マンションの供給不足が継続し、中古マンションもレインズ調べによれば、今年の月別成約数は前年同月と比べると7月以外すべて減少している。識者によれば、「全体的に取引量が少なく、小さなパイを奪い合っている」状況だという。とても適正な状態とは言えない。

 地価調査結果を見ると高騰が続いていた東京都心でもやや頭打ちの傾向が見られ、地方では北海道のように、華々しい上昇地点もあり、かつ、下落率10地点に住宅地、商業地とも6地点が入ってしまうという現実もある。金利も潮目が変わる局面を来年には迎えそうだ。不動産業界においてはこうした点を踏まえつつ、これまで同様まちづくり、市場活性化等にまい進してほしい。