政策

国交省 「耐震・環境不動産」とりまとめ公表 民間投資呼び込む重要性確認 支援要件引き上げ、スキーム合理化も

 国土交通省は8月8日、「耐震・環境不動産形成促進事業のあり方検討会」のとりまとめ報告書を公表した。耐震・環境性能を有する良質な不動産形成の促進、地域再生に寄与するまちづくりと地球温暖化対策の推進を目的に、13年3月に環境不動産普及促進機構に基金を造成して創設された同事業。これまで18案件(26物件)に対し総額約300億円を出資決定・実行してきたが、創設後10年以内に実施状況や社会情勢の変化を勘案して事業内容を見直すとした規定等を踏まえ、今年3月から検討を開始。民間投資を呼び込むための資金を供給する同事業の重要性が改めて示された。

 同事業に関しては旧耐震基準の建築物の耐震改修に加え、2050年カーボンニュートラル実現等の高い政府目標から不動産分野における環境性能の向上が求められている半面、民間のみでは工事の難度やコスト面から進みづらいという課題もある。同とりまとめでは民間投資の〝呼び水〟となるリスクマネーを供給する同事業の重要性を強調。23年度以降も継続推進する一方、基金事業であることから、新規申請受付終了時期を設定する必要性を示す。更に、〝呼び水〟としての役割を果たすため、同事業の支援要件の見直しと出資スキームの合理化を併せて行う必要性を指摘する。

 今後の事業のあり方については、(1)支援要件の見直し、(2)出資スキームの合理化、(3)運営体制、(4)普及促進――の4つの柱を明示した。まず支援要件については原則として同事業の環境要件を引き上げる一方、事業者による活用が困難とならないよう政策性と収益性を両立する水準に留意する。具体的には、建て替え・開発についてはZEB・ZEH水準を見据えて段階的に引き上げる。また、「建て替え・開発と改修との環境要件の水準の差」および「改修におけるアセットタイプや地域等に応じた水準の差」を設定する。更に、耐震改修を引き続き事業要件に含めた上、一定の環境性能向上を併せて求めることも検討するとした。

 現行の出資スキームでは、同機構と民間事業者が共同でLPS(投資事業有限責任組合)を組成し、当該LPSからSPC(特別目的会社)に出資するが、民間事業者の負担・機会費用が過大で活用が進まないとの声も踏まえ、現行スキームの趣旨に留意しつつ、LPSを経由せずにSPCへ直接出資する新スキームの導入を検討する。(3)の運営体制では、専門家の知見を活用した効果的かつ効率的な事業実施体制を継続する。引き上げ後の環境要件を踏まえ、23年度以降のKPIの新たな目標値を設定し、官民ファンド幹事会や機構理事会での報告・検証を実施する。

 更に同とりまとめでは、「インパクト投融資」としての位置付けの強化・広報により、普及促進につなげる狙いを記した。具体的には、金融機関とのパートナー協定やセミナー機会の活用のほか、案件掘り起こしに向けた不動産AM会社等への積極的な働きかけを行う。加えて、活力ある地方創りに向けて、案件形成を通じた地方における人材育成や環境不動産におけるノウハウ・知見の共有を図るため、地銀との連携強化等により同事業の知名度向上やニーズの収集に努めるとした。