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創刊記念総力企画・SDGsから見通す新たな不動産業の形 不動産企業、新たな「食」を開拓 コミュニティ活動やフードテック支援

 SDGsには、「食」にまつわる項目がある。不動産企業にとって「食」は、オフィスに入居するワーカーの飲食需要を満たすためのものであると共に、商業施設の入居テナントとして関わってきた。しかし、近年、不動産企業は「食」を通じた新たなコミュニティ活動や、フードテック企業の育成、支援などその関わり方が変化してきた。SDGsを標榜(ひょうぼう)する中、不動産企業による事例を紹介する。(桑島良紀)

テナント誘致にも貢献

 三菱地所は、08年から東京・丸の内にある同社が携わる飲食・サービス店舗約900店を対象に、「食」に関わる多様な活動を行う大人の食育活動「食育丸の内」を行ってきた。21年6月から「EAT&LEAD」として再始動。活動も食従事者と消費者が垣根を越え、一人ひとりが「幸せの価値基準」を構築するきっかけづくりを行う様々なワークショップやプログラムを展開する。

 SDGsとの関係では、大手町・丸の内・有楽町エリアに拠点を置く企業で構成される「大丸有SDGs ACT5実行委員会」と共に、持続可能性に配慮された食材「サステナブルフード」の普及を目指す活動を昨年から実施。今年も7月21日から全6回のプログラムで「SUSTABLE(サステーブル)2022~未来を変えるひとくち~」を、「常盤橋タワー」(東京都千代田区)3階のキッチン付きホールスペース「MY Shokudo Hall&Kitchen」で開催する。テーマにふさわしい有名シェフが講師として登壇し、シェフによるテーマ食材を使った料理の試食もできる。

 「EAT&LEAD」の活動について、同社は「SDGsのアクション項目にも食と関連した項目が多くあり、当社のSDGsの取り組みのうちの1つ」と位置付けている。更に、この活動に賛同し、同社の商業施設への出店につながったケースも出ている。

工場産レタス、スーパーに

 海外情勢の不安定化で、食糧危機への現実味が高まる中、フードテックは解決策の一つとして期待されている。SDGsにおいても目標2に「飢餓をゼロに」を掲げる。東京建物は19年、1階に植物工場兼研究施設、2階に料理人などを対象にしたキッチン付きコミュニティ拠点で構成される「TOKYO FOOD LAB」(東京都中央区)を開設。植物工場兼研究施設に、フードテック企業のプランテックスが入居する。

 植物工場は1年を通してフル稼働しており、都内のスーパー・マルエツで「京橋レタス」として販売。安定供給の実績を評価され、次の段階として、植物工場「THE TERRABASE(ザ・テラベース)土浦」でのレタスの生産を本格稼働させ、6月19日からマルエツやマックスバリュなどでの販売を開始している。

 フードテックの課題として、味や見た目の問題がある。「TOKYO FOOD LAB」2階のコミュニティ拠点では、フードテック企業による食材をおいしく食べるための調理法なども検討しているという。

 三菱地所は21年、「サステナブルフード」の一つとして植物肉やプラントベースの油脂などを紹介する試食付きセミナーを実施。セミナーでは、著名シェフが調理した食品を実際に参加者が試食した。試食者からは「動物性の素材が入っていないなんて信じられないおいしさ」といった感想が寄せられた。