住まい・暮らし・文化

大和ハウス工業、バンダイナムコ研ら3社 拡張体験と新たな価値を検証 北品川・築90年にXR融合 〝未来の暮らし〟エンタメ技術で訴求

 大和ハウス工業は6月3日、エンターテインメント大手傘下で先端研究を担うバンダイナムコ研究所、デジタル技術を応用した建築やプロダクトのデザインなどに強みを持つ建築設計事務所のノイズ(東京都目黒区、酒井康介代表取締役)とともに、築90年以上の古民家を改装した「XRハウス北品川長屋1930」(東京都品川区)で、「リアルとデジタルの融合」をテーマに、共同実証実験を開始した。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、MR(複合現実)など現実と仮想世界を融合するXR技術を活用し、「少し先の未来の暮らし」の具現化を図ると共に、建物とデジタル技術を組み合わせることで創出される新たな価値を検証する。

 デジタル技術やエンターテインメント技術を取り込み、来場者に「生活(利用)体験の拡張」を提供することで、実証実験での拡張体験が建物価値や建物サイクルなどへの拡張にどのようにつながっていくかを検証する。

 同物件は、京浜急行電鉄本線北品川駅から徒歩約4分に立地する、延べ97.70m2の木造2階建て。1930年代に竣工した、5棟からなる古民家群の1棟を改装した。デジタル技術の企画のうち、玄関アプローチと1階をノイズ、2階をバンダイナムコ研究所が担当し各フロアの企画構成や建物についての知見提供を担った。

 1階は、センシングデバイスによって人の動きを常に把握し、来場者がLED電球に触れる空間内に設置したタイルへの映像投影やサウンドなどを通じ、反応する空間を創出することで、あたかも家が人格を持ち、人とコミュニケーションを図るといった〝未来の生活〟を訴求した。

 2階は、古民家の和室に設置したふすまや障子、畳などに現実とバーチャルの垣根を低くするデジタル表現を加えることで、ゲームや遊びとは異なる日常生活上で体感できる〝リアルとデジタルの融合〟を図った。

 建築後数十年が経過した建物にデジタル技術やエンターテインメント技術を取り込むことで、利用者が体験を通じ、建物の「利用上の価値(住まい価値)」をどのように感じるかを実証する。今年8月末までの期間中に、有識者や業界関係者、学生などと「未来の暮らし」や「住まい価値」について意見交換するワークショップなどの開催を予定している。

 建物が利用者に提供する体験が新たな価値として組み込まれる可能性を訴求することで、経年に伴い価値が下落するイメージが強い築古物件の新たな価値創出や概念転換を図ると共に、コロナ禍によるDXへの対応や空き家問題といった課題解決への寄与を目指す。住宅にとどまらず、商業施設など様々な用途の物件への付加サービスの提供も視野に入れている。