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苦境オフィスビル 23年以降の大量供給 賃料の調整局面が続く 事業用不動産 取引は活発 投資待機資金が日本市場を狙う

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写真はイメージ(都内)

 オフィスビル市況の方向感が定まらない。コロナ禍で企業は、借りているオフィス床を返上する動きが増えたほか、23年から25年にかけて新規ビルの開業が相次ぐことが心理的な重しとなっている。

   ◎  ◎  ◎

 オフィス仲介大手の三鬼商事によれば、直近4月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は、同月に大型の解約が出た影響などで前月比0.01ポイント上昇し、6.38%と2カ月ぶりに上昇に転じた。竣工1年未満のビルに小規模ながら成約があったことから新築ビルの空室率は前月比0.70ポイント低下して19.29%だった。既存ビルの空室率は6.25%(0.02ポイント上昇)と上昇している。都心5区別に見ると、前月から低下したのは新宿区と渋谷区のみ。港区は8.33%と最も高いが前月から横ばい。残り3区は上昇した。

ビルの選別が進む

 土地総合研究所が5月19日に公表した「不動産業業況等調査」によれば、「ビル賃貸業」の4月1日時点の経営状況は、前回1月調査より改善したものの、3カ月後の見通しについては悪化するとの見通しだ。コロナ禍でオフィス不要論が出た一時期の悲壮感はないものの、資源高に伴うインフレ経済と世界的な利上げ局面を受けて、国内外の経済情勢に黄信号がともりかねないという先行きに対する不安はぬぐえていない。

 三鬼商事の調査によると、都心5区の4月の賃料は1坪当たり平均2万328円(前月比0.19%下落)と21カ月連続で落ち込んでいる。

 不動産サービス・投資運用会社のコリアーズでは、都心5区のオフィス市場について、1~3月期の空室率は5.1%と前期比0.2%の微増だった。移転や拡張計画が動き出した一方で、在宅勤務と出社のハイブリッドワークの採用を前提としたワークプレイス設計の定着によりテナントの契約面積は縮小傾向だといい、エリアごとの差異も指摘する。実際、三菱地所のデータを見ると、単体ベースで丸の内の空室率は3.33%、全国全用途平均でも3.5%と三鬼商事の都心5区平均より大幅に低い。その背景について、ジョーンズラングラサール(JLL)は、企業が本社機能を従業員が通勤しやすい利便性の高い場所に置く動きを指摘する。半面、周辺のアクセスしにくいオフィスビルは床を返す動きが続く裏返しの現象が生じている。

需給の緩みは続くか

 これから大量供給が相次ぐことが懸念材料だが、需給の緩みは限定的との見方もある。23年は、森ビルの動向が大きく影響を及ぼすが、虎ノ門・麻布台のプロジェクトは引き合いが強く、そのあふれた需要を虎ノ門ヒルズステーションタワーに回している状況との声も聞かれる。

 ただ、「賃料が反転上昇するのは難しい」との観測は市場関係者で一致する。25年も「品川駅北周辺地区」や「東京駅前八重洲1丁目東地区」など23年を上回る大量供給が控えている。JLLリサーチ事業部ディレクターの大東雄人氏は、「停止していたオフィスの移転・拡張計画が再開した印象を受けているが、今後は競争力の弱いビルはテナント誘致ができず空室を抱えたまま、テナントの選定基準に合わない、条件を満たさない物件は2次空室を埋め戻せない状況が続く」とみる。

 一方で、賃料が下がり続ける中でも売買取引は活発で、コロナの直撃を受けた企業などを中心に保有不動産を放出する機会が増えている。基本的に売り手市場だ。事業用の不動産への直接投資額の推移を見ると、09年に底を打ってから市場が回復し、おおむね4兆~5兆円の水準を保っている。そんな中、米国など主要国が金融緩和の縮小にカジを切り、外資勢が対日投資をためらったり、逆回転を始めるのではないかと懸念が及ぶ。その点について、前述の大東ディレクターは、「投資家にヒアリングすると、ドライパウダー(投資待機資金)を手元に抱えている。つまり、使わないといけない資金があるので、金融緩和縮小になってもその資金はどこかに投じられるだろう」といい、日米の金融政策の違いが外資の投資行動に影響を与えるのはもう少し先だと見通す。

イールドスプレッド

 日米金利差を受けて円安が進行していることで海外勢にとって日本の不動産に割安感を感じる局面であることに加えて、日本は金融緩和政策を続けマイナス金利の解除も見通せていない。実物不動産のリターンと借り入れコストの目安である10年国債利回りとの差、つまりイールドスプレッドが日本の不動産市場の魅力となっている。

 賃料下落などビルの絶対的なリターンは下がっている。しかし、「不動産直接投資額がピークの07年は、借り入れコストが1.5%だったが、この時期のスプレッドは現在よりも狭い。つまり投資のうまみが今よりも薄い状態だった。金利がゼロ近辺で張り付いていることで不動産の魅力が担保されている今は海外勢に魅力だ」(大東ディレクター)。米欧は利上げに動いているので、日本で低金利が続いているのであれば、諸外国のマーケットと比べれば大きなリターンが見込まれる。

 オフィスビル市況は、空室率の上昇と賃料の下落という向かい風に見舞われながらも、売り手と買い手の双方にとって過去20年で最も良質な物件をやりとりできる機会との見方もある。 (中野淳)

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