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野村不G、新たな中長期経営計画を策定 高い利益成長と資産・資本効率実現図る 30年度までに事業利益約2倍へ

 野村不動産グループは4月26日、2030年度(31年3月期)を最終年度とする新たな中長期経営計画を策定、発表した。これまでの計画の達成状況を踏まえると共に、事業環境の不透明さが増大する状況を鑑み、同社グループとして目指す企業ビジョンの明確化を柱とし、「高い利益成長と高い資産・資本効率の実現」を図る計画とした。

 新たな中長期経営計画では、野村不動産グループとして目指す30年のビジョンを「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」と設定。人々の「生活」や「時間」における新たな価値創造を実現するため、DXやサステナビリティを重視すると共に、同社の強みとする開発力を起点としたグループ内事業連携で新たな価値創造を図っていく。

 具体的な目標設定としては、同中長期計画の最終年度となる30年度には、事業利益(営業利益に持分法投資損益などを足したもの)を21年度実績の927億円から94.2%増となる1800億円以上へと成長させる。年平均8%水準での事業利益成長を見込むもので、フェーズ1(24年度)に1150億円、フェーズ2(27年度)に1400億円以上、フェーズ3(30年度)に1800億円以上と段階的な目標も置いた。

 その実現に向けては、主力である住宅部門と都市開発部門の「国内デベロップメント事業」を更に拡大していくほか、「サービス・マネジメント分野」(仲介・CRE、資産運用、運営管理の各部門)の利益成長を促し、21年度から独立部門とした海外事業の強化も図っていく。

 こうした成長を支える施策として、個別部門の事業戦略に加え、「DX推進」「人材活用」「戦略投資」の3項目を掲げる。デジタル分野への投資を進めて商品力や提供サービスを強化し、多様な人材の活躍と成長分野の人材確保に向けた体制を整備。併せて海外不動産関連などへの投資も行い、成長の加速につなげたい考えだ。

 同時に、「2050年のありたい姿」としてサステナビリティポリシーも策定。同日に開いた同中長期計画の説明会で、野村不動産ホールディングスの沓掛英二社長は、「持続的かつ高い利益成長を重要テーマとすると共に、当社グループの成長と持続可能な社会への貢献とを一体と捉えて推進していく」と発言。事業活動の中に脱炭素や生物多様性、人権尊重といった要素を組み込み、自然や社会のサステナビリティについても目標を設定して取り組む方針だ。

21年度は業績回復、増収増益

 野村不動産HDは中長期経営計画と併せて4月26日、22年3月期の連結決算を公表。新型コロナウイルス感染症の影響が色濃かった前年度から回復し、売上高・利益共に二桁の増収増益となった。各利益はいずれも過去最高を更新している。

 セグメント別の実績を見ると、住宅部門が旺盛な需要を背景として計上戸数を伸ばし、また粗利益率も向上したため、売上高3092億2500万円(前年度比13.4%増)、事業利益325億5000万円(同45.3%増)と大幅な増収増益。全体の業績をけん引した。そのほか、都市開発部門や仲介・CRE部門など、すべての部門で増収。事業利益は、運営管理部門のみ工事の遅れなどにより同0.8%の減益だったものの、それ以外の部門ではすべて増益となっている。

 次期計画としては、営業利益のみ微減ながらそれ以外はすべて伸長を見込み、各利益の更なる最高更新を目指す。

野村不動産HD

決 算 22年3月

売上高 6,450億円 (11.1%)

営業利益 912億円 (19.5%)

経常利益 825億円 (25.2%)

当期利益 553億円 (31.1%)

予 想 23年3月

売上高 6,800億円 (5.4%)

営業利益 905億円 (△0.8%)

経常利益 850億円 (3.0%)

当期利益 570億円 (3.1%)