政策

国交省 「不明土地法」見直しへ方向性示す 次期通常国会で法案提出へ 法定相続人探索も運用改善

 国土交通省は21年12月24日、「所有者不明土地法の見直しに向けた方向性のとりまとめ」を公表した。所有者不明土地(不明土地)の更なる利用の円滑化を図るため、地域福利増進事業の対象拡大などを盛り込む。今後は次期通常国会への法案提出を目指し、同とりまとめを踏まえて検討を進める。

 「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地法)」は、18年に施行された。今回の見直し措置は、21年6月の関係閣僚会議において施行後3年を迎えた同法の制度見直しに関する方針を踏まえたもの。背景には、人口減少・高齢化に伴う不明土地や管理不全土地の増加に加え、不明土地に関して同法の制定や土地基本法の改正、民事基本法制の見直しなどが進められてきた経緯がある。

 これらを踏まえ、国土審議会土地政策分科会企画部会では20年10月から審議を開始し、このほど同法の見直しに向けた方向性を整理。具体的には、地域福利増進事業の対象を拡大し、地域の災害対策に役立つ施設や、地産地消を行う再生可能エネルギー発電設備を対象に加える。また、民間事業者が主に主体となる対象事業の上限期間をこれまでの10年から20年に延長することとした。

 管理不全状態の不明土地については、生命・財産に関わる災害等の発生防止の観点から、市町村長による勧告、命令、代執行を可能とする制度を創設する方針。併せて、21年の民事基本法制の見直しにより創設された管理不全土地管理制度についても、市町村長による請求を可能とする特例を整備すると共に、国と都道府県が支援を行うべきことを明確化し、市町村の負担が過大なものとならないように留意する。

 また、低未利用土地など課題がある土地に地域一体となって取り組む体制を構築するため、市町村長が対応する法人を指定し、活動を支援・連携していく。国と都道府県は市町村に対する運用面での助言・支援を強化し、地域住民への積極的な広報・啓発活動を展開することとした。

法務局も連携強化

 なお、21年12月22日に開かれた同企画部会では、法務省から、不明土地法に基づく長期相続登記等未了土地解消作業の見直し案も示された。政府方針を踏まえた運用改善として、(1)要望受け入れの対象に民間事業者が行うニーズが高い公共的事業を追加、(2)法定相続人情報作成要件を死亡後の経過年数30年から10年に短縮、(3)土地選定の運用見直しと、受託事業者と法務局の連携強化――を図り、事業実施主体からの要望に対してより的確に対応すると共に、作業の迅速性を高め効率化を図る狙い。22年4月の運用開始を目指す。