政策

社説 「管理適正評価研」報告書まとまる 今後の議論の深化に期待

 「マンション管理適正評価研究会」の報告書がまとまった。マンション管理業協会の呼び掛けのもと、有識者と関連する業界団体が集まり、昨年9月から議論を重ねてきた。

 報告書の骨格は「管理に係る情報開示の必要性」と「管理の質が市場価格・取引価格に反映される必要性」を述べ、「適正な管理の基準」として具体的に146項目を定めたものとなっている。

 更に、管理状況の水準が一目で分かるように5段階での等級評価方法が提案されている。マンション管理問題が、〝2つの老い〟に象徴されるように、今後ますます重要かつ困難な課題となっていくことを踏まえ、更には中古住宅市場活性化という視点からも今回の報告書の意義は大きく、マンション管理に関わる人たちに広く周知できるかが今後の課題となる。

 マンションという居住形態はもともと、土地の有効活用という観点から始まった。東京など都市部への人口集中という大きな背景があった。その点、日本は今後、東京であってもいずれ人口が減少し始めることを考えると、マンションという集合住宅の役割は、もはや終わったのではないかとの議論もある。しかし、報告書は次のように指摘する。「コンパクトシティの要請を踏まえたとき、都市部において戸建て住宅に回帰することはおよそ現実的ではない」――と。人口が減少し、高齢化が更に加速し、国の経済成長も高くは望めない時代に向かうからこそ、人々が集まって暮らす集合住宅の合理性を今まで以上に高めていかなければならない。多くの世帯が一つ屋根の下に集まることで、管理コストは戸建て住宅よりも低額で済ませることができるはずだ。

 そのためには、まさに「適正な管理」が求められることになる。区分所有者の数が多くなればなるほど、〝規模のメリット〟を生かすことができるが、それに比例して難しくなる区分所有者同士の意思の疎通と、管理組合のスムーズな運営を実践していくための新たな知恵や工夫が必要になる。

 管理の質をマンションの市場価格・取引価格に反映させる必要性はまさにそのためであり、日頃の努力が資産価値の向上につながらなければ、組合員同士の合意形成は図れないのではないか。管理の質を市場価格に反映させるために不可欠なのが、購入検討者に向けての適切な情報開示である。当然のことではあるものの、これまではなされてこなかった。今回の報告書はその当たり前のことを改めて主張したものともいえる。とはいえ、そこには官民の「マンション管理問題は待ったなし」という危機感と、改善に向けた本気度が随所ににじみ出ている。

 今回の研究会には管理だけでなく、分譲、流通など各立場の団体が参加している。マンションに関わるすべての関係者が今回の報告書の提案に問題指摘も含め積極的に参加してくることを期待したい。