政策

社説 不動産各社を待ち受けるもの 人口減少社会見据えた備えを

 大手不動産会社の3月決算は、収益で過去最高決算が相次ぐなど、業績は安定成長軌道を歩き始めたように見える。分譲住宅が比較的堅調だったほか、オフィス市況が改善。更に不動産投資ブームを背景に投資家向け分譲が好調だったことが後押しした。

 4月以降も価格上昇圧力が強まる中でも分譲マンション市況は好調さを保ち、オフィス空室は低水準で、賃料はリーマンショック後の下げ過ぎからの戻し途上にある。また個人、法人の投資家の動きも底堅い。大きな減速要因はなく、事業環境は続伸基調にある。しかも20年東京五輪・パラリンピックを控え、再開発ブームが続く。

未知の事業環境

 だが、いつまでも安泰とはいかないのがグローバル化した経済。大異変がいつ襲ってくるか分からない。加えて我が国では人口減少社会、超高齢化社会がやって来る。国内市場の縮小が現実のものとなる。企業は「成長を宿命」としているが、不動産・住宅会社は海外展開で活路を見出す可能性は小さく、そこに待ち受けているのは縮小する国内市場でのパイの奪い合い、企業間競争の激化である。

 人口減少社会では、例えば新設住宅着工戸数が今の80万戸台から50万戸程度に減少し、リフォーム市場や不動産流通市場も今より縮小するだろう。一方、大都市の再開発ラッシュで大型オフィスが大量に供給され、ビル余り現象が出来する懸念もある。未知の事業環境との遭遇だ。その時のために備えや覚悟が必要なのである。

新たな競争の時代

 実際、ある上場企業の経営トップは今、将来に備えるための事業展開を模索している。業績は現在、予定通りで推移し、数年先までめどを立てている。だが、その先、次の一手の判断、仕込みが難しいという。事業エリアは都内を中心とした首都圏だが、全体的に市況はまだら模様で、同一エリアでもピンポイントで異なるため、将来的な予測は立てにくい。これは多くの不動産企業が抱える悩みの一端を示しているだろう。

 一方、業界をリードする総合大手不動産も競争激化の中で、これから正念場を迎える。マンション分譲などでは大手の寡占化傾向が強まっているが、市場が縮小気味になると、従来のような成長が難しくなる。「量から質への転換」を急ぐ時が近づいているのだ。各社とも今後は、競争力強化のために同業や異業種との連携や、M&A(企業買収)を活発化させるなど、新たな競争の時代に入るだろう。

 東京五輪・パラリンピックの後に来る人口減少社会。企業や業界はどうなるのか―想像力を働かせて、将来像を描きながら備えを確かなものにしたい。その時、企業の在り方は成長重視だけでなく、社会的な存在という視点が今より強まるはずだ。時間的には余裕がある。じっくり具体的に考えたい。