政策

社説 東日本大震災から3年 復旧・復興事業の加速に期待

 あの東日本大震災発生から丸3年を迎える。余りに大きな災禍だったため、その傷跡はまだ癒えず、生かし後世に伝えなければならない教訓も数知れず複合的である。そして被災地の復旧・復興はなったかといえば、答えは残念ながらノーである。東北太平洋岸の津波被災地はまだ途上前半であり、福島県では今なお14万人余りが避難生活を強いられ、風評被害に悩まされ、復旧にも目途が立たない状況がある。市街地の基盤整備の進ちょく度合いは自治体によってバラツキがあるほか、高台移転を伴った住宅建設や災害公営住宅の建設は始まったばかりで、多くの人たちが4年目も仮設住宅で暮らすことになる見通しだ。

「まず暮らし」という選択も

 当初はこれを機に「将来的にも安全が確保される復旧・復興を」と誰もが思った。だが、その選択は正しかったのか。理想的な復旧・復興計画を実現するには多くの時間がかかる。高齢化が進んでいる地方は時間との戦いという側面がある。「1日も早く元のような暮らしができる計画」をという選択肢があってもよかったのではないか。長期的な視点は必要だが、完成までに5年以上、10年以上も掛かるのでは意味がない。その辺りは、今後の取り組みの中で検証されていくだろうが、今後、大災害が起きたときのために、まずこのことを念頭に入れておきたい。

 とはいえ、沿岸部の被災地でもようやく、新しい街の姿が現れ始めてきた。国の支援の下、県・市町村と住民らによって描かれた青写真・復興計画が具体的なものになってきたわけだ。地元の意欲が核となり、それを全国自治体、民間機関・企業などの応援が支えている。今後、復興事業に加速がかかることを大いに期待したい。

 東日本大震災は首都圏にも大きな被害をもたらした。耐震性不足の建築物は損傷を受け犠牲者や負傷者を出した、広いエリアで液状化被害が発生、更に道路・鉄道網が完全に麻痺し多数の帰宅難民が出た―などである。原発事故に伴い停電も断続的に発生した。

忘れないで経験生かす

 そこで強まったのが「安全・安心」「事業継続計画」「一層の省エネ・環境対応」という意識である。住宅・マンションの商品企画はシフトし、中古住宅などの既存ストックは耐震改修への動きが加速。ビルではBCP(事業継続計画)への対応である。首都直下地震や南海トラフ地震など巨大地震の発生確率が次第に切迫していることも背景にある。

 折から20年東京五輪への準備が本格化する。日本の復興を世界の人に見てもらう絶好の機会である。東京だけでなく、被災地にももっとスポットを当てたい。大震災を忘れず、その経験を街づくりや地域づくりに生かしたい。「3.11」はそうした気持ちを新たにする日としたい。