迎えた午年の新年。住宅・不動産業界にとって、「飛躍する年」になってもらいたいと思う。4月に迫った消費税の8%引き上げ、その1年半後に10%引き上げが控えるなど、アベノミクスの真価が問われる、正念場の年でもある。
振り返ると、13年は財政出動と金融緩和という大胆な経済政策によって円安、株価高が進行し、景気回復への期待感が高まった。その効果は輸出企業など、まだ一部にとどまっているが、日経平均株価は久方ぶりに1万5000円台に乗せた。新年は、その効果をどこまで浸透させ、実体経済を回復させることができるか。第3の矢である成長戦略を、いかに具体化し、実を上げていくかである。
住宅・不動産業界の13年は、近年になく堅調に推移した。大都市圏の地価は住宅地、商業地とも需要の強いエリアで反転上昇傾向になり、中古住宅取引も根強い需要を背景に取引件数が最高を更新した。消費税の駆け込みもあったが、新設住宅着工は年率換算で100万戸を超える勢いを見せた。
新築分譲マンションは首都圏の供給が6年ぶりに5万戸台に戻し、オフィスビル市場も空室率が改善、賃料上昇が期待できる水準まできた。それは、9月中間決算で大方の企業が増収増益基調を確保したことにも表れている。
まず消費増税を注視
だが、業界を取り巻く環境は複雑で、一筋縄ではいかない。当面の課題は、消費増税に伴う反動にどう対処するかである。注文住宅の場合、経過措置期限の9月末以降の10月、11月は新規契約が前年比20%前後減少するなど、駆け込みの反動が既に明らかとなった。対策として、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金制度など需要者の増税負担軽減策が創設されたが、今後、住宅着工がどう推移するか注視する必要がある。
新築マンションの方は、憎税に伴う駆け込みはそれほどではなかったが、需要者の所得の伸び悩みと、用地高、建築費上昇に伴う販売価格の上昇が懸念材料だ。首都圏では年収倍率が既に9倍近くになり、取得能力の限界に到達している。親などからの資金援助と史上最低水準の金利が購買力の支えだが、これだけでは今後の市場にとって余りにも心許ない。世帯所得の伸びが待たれる。
10年先を見据えて
また、中長期的に、少子高齢化、人口減少社会を迎えることへの対応、備えが必要である。住宅・不動産市場は、向こう10年ほどは急速に縮小することはなく、むしろストック活用事業が台頭してくることが期待できるし、都市化も一層進むだろう。だが、間違いなく住宅着工やマンションの新規供給量が大きく減少する時代が来る。国内市場の縮小は競争の激化、寡占化へ進むと同時に、企業は新たな分野の開拓が求められる。
その対策として、新規事業や海外事業などが考えられるが、短期間で実現できるものはほとんどないだろう。その意味で、今から時間をかけて将来に備えた事業の種をまき、芽を育てることが求められる。幅広い視野で、果敢に挑戦していく姿勢が必要である。