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大言小語 負担はだれが

 青天の霹靂(へきれき)とはまさにこのことを言うのか。栃木県矢板市の市民はそう思ったことだろう。政府は、東京電力福島第一原発事故により栃木県内で発生した1キログラム当たり8000ベクレル超の指定廃棄物の最終処分場について、矢板市塩田の国有地に建設したいと地元に伝えた。候補地は、綺麗な国有林が植わり、水源地もある場所。3~4ヘクタール規模の処分場を作るという。

 ▼伝達に来た環境副大臣はさすがに元俳優らしく、真剣な表情を作って、まるで現役当時演じていた刑事さながら淡々と伝えたが、地元は納得せず、唐突な訪問と、地ならしをしない相変わらずの政府対応に憤りを隠せなかった。

 ▼特に印象的だった市民の言葉は、「ようやく沖縄県民の気持ちが分かった。なぜあれだけ怒るのか。本当に遅ればせながらだが」というもの。本来、東京電力が責任を持って廃棄物の処分を行うべきで、なぜ無関係の我々がと思うのは、沖縄県民の防衛に対する気持ちと相通じる。

 ▼あの震災から1年半。にもかかわらず、復興が進んだ地域は数少なく、手付かずだったり、事後処理が先延ばしになっているケースが多い。廃棄物については、他に宮城、茨城、千葉、群馬の各県で最終処分場の計画があるが、候補地はまだ具体的に出てきていない。トップダウンではなく、上から投げつけるような対応では、これからも一向に進まないだろう。