賃貸経営、管理、土地活用、不動産投資・空き家対策・建物検査などビジネスに役立関連ニュースや豆知識をお送りします。
VOL 42 発行日:2023.5.15


銀座の高級時計店で人通りの多いなか強盗事件が起きました。先月も衆人の見ている長野の善光寺で大きな仏像が、盗まれました。この事件のニュースを聞いて「人通りの多いところでどうして起きるの?」と思われた人は多いでしょう。しかし、その場におられた人は、異常な犯罪だと考えもしなかったようです。これも心理学の「正常性バイアス」の一種と考えられます。

正常性バイアスとは、予期せぬ事態に遭遇したときに「たいしたことじゃない」「このぐらいなら大丈夫」と判断し、平静を保とうとする心理メカニズムのことです。

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異常と思わなった昭和60年代の不動産バブル

1987年円高不況を懸念した日銀は、公定歩合を2.5%というかつて無い低い低い水準まで引き下げました。金余りの状態が生まれ、そのお金が日本中の土地や株式市場にまで流れ込みました。
地上げ屋が横行し、1日で数億の不動産が転売に転売を重ねる「土地転がし」が起きました。異常な経済です。ところがこれに警鐘を鳴らす人は、少なかったようです。入社したばかりの銀行員が「お金を貸しますから投資をしましょう」と言ってきました。 誰もが「日本経済はますます成長する」「土地はまだまだ上がる」と思っていました。

ところが、日銀と大蔵省は90年に突然、公定歩合を2.5%から6%に引き上げました。総量規制を行いました。そしてバブル崩壊です。そして多くの金融機関や証券会社が経営破綻しました。
あれから33年、公定歩合がマイナス金利になっても、日本経済は回復していません。不動産バブルを異常な状態とは、思わなかったツケが重くのしかかっています。

津波が押し寄せて来ると思わなかった

東北の地震では、多くの方が津波の犠牲となられました。ようやく逃げられた人に聞いてみると、「20mを超える津波なんてこない。これくらいなら大丈夫」と思ったということです。異常事態に際して、平静を保とうとする心理「正常性バイアス」が悪いわけではありません。平静を保てるからこそ危機に際して冷静に対処できるのです。
しかし「正常性バイアス」が、「これくらいならイイだろう」「まだまだ大丈夫」「いままで起きたことはないから、これからも起きない」という考えに傾くと、危機は増殖して回復不可能になってしまいます。
ビジネス面でみれば、「これくらいなら許される」の品質管理の甘さが、重大なコンプライアンス違反となって会社の業績を一気に悪くする例は毎年起きます。
「たいしたことではない」という、「手抜き工事」、「建物の劣化の見逃」「管理不足」が、自然災害で、多数の犠牲の原因となってしまいます。熱海の土砂災害、熊本の地震、・・・・。

異常を感じる感覚を

不動産というフィールドでビジネスをしている私達にも、考えておく必要がいくつもあります。 不動産管理でいえば、「どうも管理している住宅で、水はけがオカシイ?」は、地盤に何らかの異常が起き始めているかもしれません。不動産取引では、2011年からこの10年で、新築マンションは1.8倍になっています。都心のタワーマンションには、1億以下はなくなったとも言われます。果たして、この価格は経済の実態を反映しているのでしょうか? 少子化時代、実際の住まいの需要は減るはずです。需要が減って供給が増えると価格は下がるのが原則です。「これは、何かの異常の前兆ではないか?」と考えてもおかしくありません。
地震や自然災害が増えています。世界の自然災害はこの40年で倍以上増えているというドイツのデータがあります。日本でもこの30年で1.5倍になっています。こうなると誰も異常とは言わなくなります。こんなときこそ、備えが必要です。「建物の点検と補修」「万一のための保険」「日頃の訓練」これをレジリエンスといいます。この考え方を広める責務が私達にはあります。

関連資格:認定火災保険調査員