宅建士試験が5点免除となる範囲とは?仕組みやメリットを徹底解説
宅建士試験には、特定の条件を満たすことで試験問題の一部が免除される制度があります。この制度を活用すれば、全50問のうち5問が自動的に正解扱いとなり、受験者は実質45問の解答で済むようになります。
不動産業界で働く方にとって、この宅建の5点免除制度は合格への大きなアドバンテージとなります。しかし、免除を受けるためには登録講習の受講が必要であり、その内容や手続きについて正確に理解しておく必要があります。
本記事では、宅建士試験の5点免除制度について、免除される問題の範囲から受講資格、具体的な手続き方法まで詳しく解説します。制度を活用すべきか迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
宅建士試験の5点免除制度を知っておこう!
宅建士試験の5点免除制度は、正式には「登録講習修了者に対する試験の一部免除制度」と呼ばれています。この制度を利用することで、受験者は試験問題の一部について解答する必要がなくなります。
宅建士試験に5点免除が適用される理由
宅建業従事者が登録講習を修了することで、実務に関する知識を既に習得していると認められるため、試験の一部が免除される仕組みになっています。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 免除される問題数 | 5問 | 全50問中の問46から問50 |
| 必要な条件 | 登録講習の修了 | 宅建業従事者であることが前提(実務経験は不問) |
| 修了資格の有効期限 | 3年間 | 修了試験合格日から起算 |
| 免除時の試験時間 | 1時間50分 | 通常は2時間 |
この制度が設けられた背景には、不動産取引の実務を日常的に行っている従業者に対して、重複する学習負担を軽減する目的があります。登録講習では、試験で問われる実務的な内容について、より実践的な視点から学ぶことができます。
登録講習は国土交通大臣の登録を受けた機関が実施しており、講習内容は統一された基準に基づいています。講習を修了し、修了試験に合格することで、修了者情報が通知されます(書面またはメール)。この修了資格の有効期限は3年間であり、その期間内に宅建士試験を受験する際に免除が適用されます。
登録講習を受講するメリットは、単に試験問題が減るだけではありません。実務に即した知識を体系的に学べるため、合格後の実務でも役立つ内容となっています。
5点免除されることによる宅建士試験の合否への影響
5点免除を利用することで、合格基準点に対する必要正答数が実質的に少なくなり、合格率が向上する傾向があります。
| 受験区分 | 受験問題数 | 合格基準点の目安 | 合格率の傾向 |
|---|---|---|---|
| 一般受験者 | 50問 | 35問前後 | 15~17%程度 |
| 登録講習修了者 | 45問 | 30問前後 | 20~25%程度 |
| 差 | 5問少ない | 5問少ない | 約5~8%高い |
通常の宅建士試験では、50問中おおむね35問前後の正答が合格ラインとなります。これに対して5点免除を利用した場合、45問中おおむね30問前後の正答で合格できる計算になります。免除される5問は自動的に正解扱いとなるため、実質的に合格のハードルが下がることになります。
統計的に見ると、登録講習修了者の合格率は一般受験者よりも高い傾向にあります。これは免除制度による有利さに加えて、受講者が不動産業界で日常的に実務に触れていることも影響していると考えられます。
さらに、試験時間も通常の2時間から1時間50分に短縮されますが、解答すべき問題数も減るため、時間的な余裕が生まれます。この余裕を活用して、他の問題により集中できる点も大きなメリットです。
宅建士試験の5点免除で免除される範囲を解説
宅建の5点免除制度で免除される問題は、宅建士試験の出題範囲のうち特定の分野に限定されています。どの問題が免除されるのかを正確に把握することで、学習計画を効率的に立てることができます。
免除対象となる問題の範囲
免除対象となるのは問46から問50までの5問で、具体的には「土地・建物の形質等に関すること」と「宅地・建物の需給に関する法令及び実務に関すること」の2分野が該当します。
| 問題番号 | 出題分野 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 問46 | 住宅金融支援機構 | 機構が取り扱う業務等 |
| 問47 | 不当景品類及び不当表示防止法 | 不動産の広告、表示に関する規制等 |
| 問48 | 宅地建物の需給 | 不動産市場の動向、統計等 |
| 問49 | 土地に関する知識 | 土地の形質、地盤、災害等 |
| 問50 | 建物に関する知識 | 建物の構造、材料、設備等 |
法令上、5点免除の範囲として定められているのは以下の2つの科目です。
- 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること
- 宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること
これらの内容は、宅建士試験の出題科目のうち、いわゆる実務系科目と呼ばれる分野に該当します。登録講習では、これらの内容について実務的な観点から詳しく学習します。
免除される5問は試験の最後の部分に位置しているため、一般受験者が最後まで解き進める必要がある問題を、免除対象者は解答する必要がありません。これにより心理的な負担も軽減されます。
宅建士試験における5点免除の対象となる試験問題
免除対象の5問は、法律知識よりも実務的な知識や時事的な内容が問われる傾向があり、暗記だけでは対応しにくい分野です。
特に問48の宅地建物の需給に関する問題では、その年の不動産市場の動向や統計データが出題されることが多く、最新の情報をキャッチアップする必要があります。また、問49の土地に関する知識や問50の建物に関する知識は、専門的な内容を含むため、実務経験がない受験者にとっては学習負担が大きい分野といえます。
一方で、権利関係や宅建業法などの法律系科目は免除の対象外です。これらの科目は宅建士試験の中核をなす重要分野であり、すべての受験者が学習する必要があります。
- 権利関係は14問出題され、民法を中心とした法律知識が問われる
- 宅建業法は20問出題され、宅建士試験の中で最も配点が高い
- 法令上の制限は8問出題され、都市計画法や建築基準法などが含まれる
- 税その他は3問出題され、税法や価格評定の基礎が問われる
したがって、5点免除を受ける場合でも、法律系科目の学習は手を抜くことができません。免除によって生まれた学習時間を、これらの重要科目の理解を深めることに充てることが合格への近道となります。
宅建の5点免除を受けるために必要なこと
宅建の5点免除を受けるためには、登録講習の受講から修了資格の取得、そして試験申込時の手続きまで、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、その具体的な流れを詳しく解説します。
宅建士の登録講習の受講資格と必要書類の確認
登録講習を受講するためには、申込みから修了まで宅建業に従事していることが必須条件となりますが、実務経験の有無は問われません。
| 必要書類 | 発行元 | 用途 |
|---|---|---|
| 従業者証明書 | 勤務先の宅建業者 | 宅建業従事者であることの証明(押印不要) |
| 本人確認書類 | 本人 | 運転免許証やマイナンバーカードなど |
| 受講申込書 | 実施機関 | 講習受講の申込み |
| 受講料 | 本人 | 講習費用の支払い |
従業者証明書は、受講者が宅建業者に勤務していることを証明する書類です。この書類には、勤務先の宅建業者の免許番号や商号、受講者の氏名などが記載されます。なお、法改正により従業者証明書への押印は不要になりました。従業者証明書は原則として就業開始時に会社から発行されるため、通常は所持しているはずですが、入社直後の場合はまだ持っていない可能性もあります。
なお、宅建業従事者であれば、正社員である必要はありません。パートやアルバイト、契約社員であっても、従業者名簿に登録されており、従業者証明書の交付を受けられれば受講資格があります。ただし、派遣社員の場合は派遣元が宅地建物取引業者である必要があります。
重要な点として、あくまで「宅地建物取引業」の従事者が対象であり、賃貸住宅管理業等の従事者は対象外となります。
受講料は実施機関によって異なりますが、おおむね1万5千円から2万円程度が一般的です。この費用には、講習受講料と修了試験受験料が含まれています。
宅建士の登録講習の受講方法
登録講習は約2か月間の自宅学習と約10時間のスクーリング講義、そして修了試験から構成されています。
| 学習形式 | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 自宅学習 | 約2か月 | テキストによる自宅学習 |
| スクーリング | 約10時間(1日または2日間) | 会場スクーリングまたはオンラインスクーリング |
| 修了試験 | スクーリング後 | 四肢択一式・○×式など(実施機関により異なる) |
講習の流れは、まず自宅での学習から始まります。実施機関から送付されるテキストを使用して、約2か月間、自分のペースで学習を進めます。自宅学習では、土地や建物に関する知識、不動産市場の動向、取引実務など、免除対象となる分野を体系的に学びます。
- 自宅学習期間に送付されたテキストを使用して学習を行う(約2か月間)
- 指定された日程でスクーリング講義に参加する(約10時間)
- 修了試験を受験する
- 修了試験に合格すると修了者情報が通知される
スクーリング講義には「会場スクーリング」と「オンラインスクーリング」の2種類があります。会場スクーリングは全国各地の会場で実施され、1日コースまたは2日コースがあります。オンラインスクーリングの場合は、自宅等からパソコンやスマートフォンで受講できます。講義時間は全部で約10時間です。
修了試験は、会場スクーリングの場合はスクーリング最終日に実施されます。オンラインスクーリングの場合は、別日にペーパーテスト形式で実施されます。試験形式は実施機関によって異なり、四肢択一式や○×式などがあります。講習内容をしっかり理解していれば合格できる内容で、合格率は非常に高くなっています。
修了試験に合格すると、約1週間程度で修了者情報が通知されます。法改正により、書面だけでなくメールでの通知も可能になりました。
5点免除試験の試験申込の手続き
修了資格の有効期限は修了試験合格日から3年間であり、宅建士試験の申込時に修了番号を記入することで免除が適用されます。
宅建士試験の申込時には、修了番号を記入する必要があります。郵送申込の場合は願書に修了番号を記入し、インターネット申込の場合は番号を入力します。申込時に正しく手続きを行わないと免除が適用されないため、注意が必要です。
免除が適用されると、受験票にその旨が記載されます。試験当日は、一般受験者と同じ会場で受験しますが、問46から問50までの解答は免除されます。試験開始時刻は一般受験者と同じですが、終了時刻が10分早くなります。
- 修了資格の有効期限を確認し、期限内に試験を受験する
- 試験申込時に修了番号を記入する(郵送の場合は願書に記入、Web申込の場合は番号を入力)
- 受験票に免除適用の記載があることを確認する
- 試験当日は問46から問50の解答が免除される
なお、宅建士試験の受験申込は例年7月1日〜7月31日に行われるため、登録講習は7月下旬までに修了しておく必要があります。自宅学習期間が約2か月あるため、スクーリング実施日の2か月以上前に申込みを完了させましょう。
修了資格の有効期限が切れている場合は、再度登録講習を受講する必要があります。有効期限の管理には十分注意しましょう。また、一度修了資格を取得すれば、有効期限内であれば複数回の試験で免除を受けることができます。
まとめ
宅建士試験の5点免除制度は、宅建業従事者にとって大きなメリットがある制度です。宅建の5点免除の範囲は、問46から問50までの5問で、具体的には「土地・建物の形質等」と「宅地・建物の需給に関する法令及び実務」の2分野が該当します。実質的に45問の解答で済むため、合格のハードルが下がります。
免除を受けるためには、登録講習を受講し修了試験に合格する必要があります。約2か月間の自宅学習と約10時間のスクーリング講義を経て、修了資格を取得することで、3年間有効な免除資格が得られます。受講には宅建業従事者であることが条件となりますが、実務経験の有無は問われません。従業者証明書があれば受講可能です。
免除される5問は土地や建物の知識、不動産市場の動向など実務的な内容が中心です。法律系科目は免除の対象外であるため、権利関係や宅建業法などの重要科目はしっかりと学習する必要があります。免除制度を上手に活用し、効率的な学習で宅建士試験の合格を目指しましょう。















