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VOL 39 発行日:2023.4.24


2025年には、築40年を超えるマンションは150万戸となり、2035年には300万戸になります。
これらのマンションは、適切な大規模修繕を行わなければ劣化が進行し、資産価値が極端に低くなります。最悪の場合は、限界マンションといわれスラム化のおそれがあります。適切な修繕は最低限ですの必要な工事ですが、築40年を超えるマンションには、大規模修繕では解決されない問題もあります。

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大規模修繕では解決できない問題

大規模修繕で解決できれば、限界マンションにならないのですが、構造や立地などで大規模修繕では解決できないケースがあります。「マンション建替円滑化法」では、5つの状態を「要除却認定」として示しています。
耐震性が不足していること、
火災に対する安全性が不足している、
外壁等の剥落により周辺に危害を与える恐れがある、
給排水の腐食により著しく衛生上有害となる恐れがある、
バリアフリー基準への不適合の5つです。
これらは、建築時には建築基準法に適合していたものの、建築後の法の改正等や想定外の劣化により不適格になったものがほとんどです。

要除却認定とは

上記の5つの状態「耐震性の不足」「防火性能が低い」「外壁の剥落」「設備の腐食による危険性」「バリアフリーの不足」があるマンションは、特定行政庁に管理組合の申請を行うことで「要除却認定」を受けることができます。「要除却認定」という言葉の印象から、直ちに除却しなければならないと思われがちですが、これを受けると2つのメリットがあります。
ひとつは、区分所有者、議決権および敷地利用権の持分価格の各5分の4以上の同意によって、当該マンションの敷地を売却する旨の決議(マンション敷地売却決議)ができるようになります。通常は全員の合意が必要でしたが、いくぶん緩和されたということです。
2つ目は、要除却認定マンションは、建て替えにより新たに建築されるマンションに、一定の敷地面積があり、市街地環境の整備・改善に資するものについては、容積率の制限が緩和されます。

容積率の制限緩和

建替えのハードルのひとつに、建替え資金があります。建替えには、1戸あたり概ね3000万円の費用がかかると言われています。建替えが検討されているマンションは、高齢化で年金生活者が多く、資金を調達するのは難しい状況です。若い世帯は二重ローンとなります。これが建替えを難しくしている一番の要因です。これまで建替えできたマンションの事例は、もともと容積率に余裕があるケースがほとんどです。つまり建替え後には、部屋数が増えてその部屋を売却した収益で、建替え資金を補填できた場合です。

「マンション建替円滑化法」には、どの程度の容積率緩和になるのかは記載がありませんが、元の容積率が200%だった場合に、300%に緩和されたとすると、一概にはいえませんが、建替え資金の50%程度はまかなえるのではないかと思われます。マンションの建替えのハードルは他にもあるので、この施策だけで建替えが進むとは考えられませんが、ひとつの前進であるとは言えます。

関連資格:建物検査士