不動産取引に関する争いはいつの時代もなくなる事はありません。

国土交通省総合政策局不動産業課のデータによると、国民生活センターなどへの相談件数も毎年7万件も発生しているのです。

参照:不動産トラブルにおける簡易・迅速な紛争解決に向けた方策について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000049289.pdf

内容としては「業者が関与した不動産取引に関する苦情・紛争相談」が最も多く、続いて「民事相談」「不動産取引に関する一般相談(信用調査を含む)」となっています。

 

このような争いを解決する方法としてよく耳にする「ADR」とはどのようなものなのでしょうか?

この記事では、ADRとは何かを徹底解説し、不動産取引におけるADRの重要性についてもお伝えしたいと思います。

ADRと調停人とは何か?詳しく解説!

ADRとは「裁判外紛争解決制度」のことで、裁判手続きによらずに紛争を解決する手法をいいます。

 

「Alternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手続)」の略で、Alternative(代替的)・Dispute(紛争)・Resolution(解決)の頭文字を取ったものです。

 

通常、「裁判」は、ある当事者間の紛争について裁判所が最終的な判断を示すことによって、その争点に最終的な解決を与えます。
これに対して「ADR」は当事者間の自由な意思と努力に基づいて紛争の解決を目指すものです。

調停人とは?

調停人とは、非弁行為になることなく、調停を実施できる存在です。

本来、弁護士でない者が報酬を得て、法的なトラブルに介入することは認められておらず(弁護士
法第72 条)、業務上のお客様からの相談や調査などを受けた場合でも、トラブルの内容自体に関
わることは 弁護士法違反(非弁行為)となる恐れがありました。

法務大臣認証ADR調停人は、ADR業務(調停業務)で正式に報酬を得ることができ、安心して調停業務を行えます。

 

【調停人になり、トラブルの仲裁ができる】
法務大臣認証ADR調停人の基礎資格の取得者は、法務大臣認証裁判外紛争解決機関である一般社団法人日本不動産仲裁機構の「調停人研修」を受講し、「調停人登録」をすることにより各専門分野のADR業務(調停業務)を報酬を得て実施することができます。 今までは、弁護士しかできない業務が調停人として仲裁できるようになったのです。

ADRの種類

ADRは2種類に分かれます。

①斡旋・調停
斡旋・調停とは、「斡旋人」と呼ばれる仲介者を間に入れて、あくまで当事者同士の話し合いによって問題解決を図る方法のこと。
斡旋人が意見を提示したり、解決案を提示したりする場合もありますが、当事者達は斡旋人の意見や解決策を否定しても構いません。あくまで一意見、参考としての解決策になります。

 

②仲裁
仲裁とは、仲裁者の判断で問題解決を図る方法のことで、当事者は仲裁者の解決策を否定できません。当事者双方が仲裁に合意すると始まります。
裁判官の判決と同様、仲裁者の判決に従う必要があり、仲裁によって解決された事件は裁判を起こせないため、絶対的な判決となるのです。

ADRにはどんなタイプがある?

さまざまなADRがありますが、大きく分類すると次のようなタイプにわけることができます。

① 助言型
当事者間の自主的な解決を促すために第三者が助言を行うもの
例:相談
※一般的には「あっせん」「調停」「仲裁」による解決をADRと呼んでいますが、ここでは広
くとらえて、「助言」もADRの一つとして含めています。

② 調整型
当事者間の合意により紛争の解決を図ろうとするもの
例:調停、あっせん

③ 裁断型
あらかじめ第三者の審理・判断に従うという一般的な合意の下に手続を開始するもの
例:仲裁

裁判とADRの違いは?

裁判とADRには、多くの点で違いがあります。

①同意の有無
裁判を起こすのに相手の同意は必要ありませんが、ADRに関するあっせん・調停・仲裁手続では相手の同意がなければ手続を始められません。

②公開性
裁判は、原則的に公開で行われますが、ADRは非公開で行われます。

③強制力
裁判では、第三者である裁判官が解決案となる判決を下します。判決には強制力があり、当事者がこれを拒否することはできませんが、控訴・上告することができます。

ADRのうち、調停・仲裁手続では解決案が提示されますが、調停手続で提示された解決案に
は強制力がありません。
仲裁手続で提示された解決案には強制力があり、これを拒否したり、不服を申し立てることは
できません。

ADRの費用はいくらかかるのか?

ADRは「裁判所を通さずにスムーズに解決する」ことが目的のため、一般的には多額の費用は発生しません。
不動産に関する手数料は以下のとおりです。

 

①申立手数料
申立手数料の額は10,000円(税別)です。

② 期日手数料
期日の開催ごとに1 期日あたり10,000円(税別)の手数料が発生します。
当事者双方が半額ずつ負担します。

③ 紛争解決手数料
和解が成立したときは、和解契約書に記載された紛争解決手数料が発生します。
原則として当事者双方が半額ずつ負担します。

解決額に応じて、次の表のとおり算出します。

 

調停人になるメリット

法務大臣から認証されていることで、信頼性が向上します

 

法務大臣認証ADRの調停人となることで、その認められた専門分野の範囲については、認証ADRの手続において最終的な和解のあっせんまでを正当な業務として実行可能となるため、業務の信頼性が飛躍的に向上します。

 

トラブル解決の専門性をPRすることで、差別化できます

 

不動産取引においては、大きな金額がやりとりされるため、売主や買主はトラブルは避けたいと考えています。したがって、不動産会社として「トラブル解決の専門性」をPR することで、他社との差別化をすることができます。

 

調停人として、規程に定められた報酬を受け取ることができます

 

ADR 調停人になると、ADR業務自体を有償で行うことができるようになります。調停人の報酬は「報酬規程」により定められており、また和解が成立した場合には「和解成立に係る報酬」として規程の金額を受け取ることができます。

 

トラブル相談をサービスメニューに加えることができます

 

トラブル相談をサービスメニューに加えられると共に、ここから案件の受託につなげることができるようになります。

調停人になるために

調停人に要求される3つの能力要件(ADR 法第6条)

 

調停人の要件は、法律上「紛争の範囲に対応して、個々の民間紛争解決手続において和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任すること」と規定されています(ADR 法第6条)。

調停人になるには、一般的要件として①【法律知識】、②【紛争分野の専門性】、③【ADR技術】を全て満たしていることが求められます。

 

 

基礎資格の保有者は「調停人研修」受講で調停人になれる

 

各専門分野の基礎資格の保有により、その専門分野については「要件② 紛争分野の専門性」を有するものとみなされますので、残りの「要件① 法律知識」「要件③ ADR 技術」を満たす調停人研修を受講することで、調停人となることができます。

ADR調停人研修受講のための基礎資格

 

 

法務大臣から裁判外紛争解決機関として認証を受けた日本不動産仲裁機構の調停人となるための不動産関連紛争に対応する各分野の主な専門資格

 

不動産相談員研修(対応分野:不動産取引)
・土地活用プランナー(対応分野:不動産管理)
・不動産仲介士(対応分野:不動産仲介)
・投資不動産取引士(対応分野:売買・仲介)
・相続診断士(対応分野:不動産相続)
・住宅ローン診断士(対応分野:住宅ローン)
・空き家再生診断士(対応分野:不動産管理)
・民泊適正管理主任者(対応分野:民泊)
・サブリース建物取扱主任者(対応分野:サブリース)
・ホームインスペクター(対応分野:施工)
・住宅建築コーディネーター(対応分野:施工)
・太陽光発電メンテナンス技士(対応分野:太陽光発電システム)
・太陽光発電アドバイザー(対応分野:太陽光発電システム)
・敷金診断士(対応分野:敷金)
・小売電気アドバイザー(対応分野:小売電気)
・建物検査士(対応分野:施工)
・シックハウス診断士(対応分野:シックハウス)
・雨漏り検診士(対応分野:漏水)
・住宅販売士(対応分野:販売)
・リフォーム提案士(対応分野:施工)
・カビ・ダニ測定技能士(対応分野:かび・ダニ)
・ペット共生型住環境アドバイザー(対応分野:ペット)
・マンション防災推進アドバイザー(対応分野:防災)
・相続財産再鑑定士(対応分野:相続)
・認定火災保険調査員(対応分野:住宅調査)
・地震保険調査士(対応分野:住宅調査)

 

特に不動産相談員研修は宅建の資格保有者限定で、研修の修了者は一般社団法人日本不動産仲裁機構(法務大臣認証裁判外紛争解決機関)の調停人候補者の登録に必要な基礎資格を有する者として認定されます。

宅建に合格された方は、ぜひ次のステップアップとして不動産相談員研修にチャレンジしてみてください!

 

不動産相談員研修の詳細はこちら

 

 

ADRに関する資格の詳細や試験申込みは「不動産ココ 資格ページ」から!