21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本社解答と解説 【問1~10】

賃貸不動産経営管理士試験2021年過去問題解答と解説

【問1】

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、各問において「管理業法」という。)に定める賃貸住宅管理業者が管理受託契約締結前に行う重要事項の説明(以下、各問において「管理受託契約重要事項説明」という。)に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

 

1 管理受託契約重要事項説明は、管理受託契約の締結とできるだけ近接した時期に行うことが望ましい。

2 管理受託契約重要事項説明は、業務管理者が行わなければならない。

3 賃貸住宅管理業者は、賃貸人が管理受託契約重要事項説明の対象となる場合は、その者が管理受託契約について一定の知識や経験があったとしても、書面にて十分な説明をしなければならない。

4 管理受託契約に定める報酬額を契約期間中に変更する場合は、事前説明をせずに変更契約を締結することができる。

 

 正 解

 

①は不適切。管理受託契約重要事項説明の時期については、貸主になろうとする者が契約内容とリスク事項を十分に理解し、契約意思が安定した状態で締結されるために、重要事項の説明から契約締結までに1週間程度の十分な期間をおくことが望ましいとされている。

 

②は不適切。法13条に基づく説明(以下「管理受託契約重要事項説明」という。)は、業務管理者によって行われることは必ずしも必要ない(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方13条関係1)。

 

③は適切で、正解。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方解第3条関係1。

 

④は不適切。賃貸住宅管理業者は、契約期間中に報酬に関する事項に変更があった場合には、少なくとも変更のあった事項について、当初契約の締結前の管理受託契約重要事項説明と同様の方法により、賃貸人に対して書面の交付等を行った上で説明する必要がある。

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【問2】

次の記述のうち、賃貸住宅管理業者が管理受託契約重要事項説明において説明しなければならない事項として適切なものはいくつあるか。

 

ア 管理業務の内容及び実施方法

イ 報酬並びにその支払の時期及び方法

ウ 管理業務の一部の再委託に関する事項

エ 管理受託契約の更新及び解除に関する事項

 

1 1つ

2 2つ

3 3つ

4 4つ

 

正 解

 

アは適切。法第13条1項、規則第31条第3号。

 

イは適切。法第13条1項、規則第31条第4号。

 

ウは適切。法第13条1項、規則第31条第6号。

 

エは適切。法第13条1項、規則第31条第11号。

 

以上により、ア~エのすべてが正しく、正解は④となる。

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【問3】

管理受託契約重要事項説明におけるITの活用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

1 管理受託契約重要事項説明に係る書面(以下、本問において「管理受託契約重要事項説明書」という。)に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合、賃貸住宅の賃貸人の承諾が必要である。

2 管理受託契約重要事項説明書を電磁的方法で提供する場合、出力して書面を作成できる方法でなければならない。

3 管理受託契約重要事項説明をテレビ会議等のITを活用して行う場合、管理受託契約重要事項説明書の送付から一定期間後に説明を実施することが望ましい。

4 管理受託契約重要事項説明は、賃貸住宅の賃貸人の承諾があれば、音声のみによる通信の方法で行うことができる。

 

正 解

 

①は正しい。法13条2項。

 

②は正しい。規則第32条第2項1号。

 

③は正しい。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方解13条関係4(2)。

 

④は誤りで、正解。管理受託契約重要事項説明書を電磁的方法で提供する場合、説明者及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像が視認できなければならないものとされている。

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【問4】

管理受託契約の性質に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

 

1 管理受託契約は、民法上の委任と雇用の性質を併有することが想定されている。

2 民法上の請負は、法律行為又は事実行為をすることを目的とする。

3 建物設備の維持保全業務は、民法上の準委任に当たる。

4 民法上の委任契約は、書面で契約を締結することが義務付けられている。

 

正 解

 

①は不適切。管理受託契約は、民法上の委任契約の性質を有するが、雇用の性質を有するものではない。

 

②は不適切。請負契約は委任契約と異なり、事実行為をすることを目的とする契約を含まない。

 

③は適切で、正解。建物設備の維持保全業務は、法律行為でない事務の委託を目的とするものであり、準委任契約に当たる。

 

④は不適切。民法上の委任契約を締結する際に書面を作成する義務は定められていない。

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【問5】

次の記述のうち、賃貸住宅標準管理受託契約書(国土交通省不動産・建設経済局令和3年4月23日公表。以下「標準管理受託契約書」という。)にて賃貸住宅管理業者に代理権が授与されている事項に含まれないものはどれか。

 

1 未収金回収の紛争対応

2 賃貸借契約の更新

3 修繕の費用負担についての入居者との協議

4 原状回復についての入居者との協議

 

正 解

 

①は含まれないので、正解。賃貸住宅管理業者に代理権が授与されているのは、未収金の督促にとどまり、紛争対応については代理権は授与されていない。

 

②は含まれる。賃貸住宅管理業者に代理権が授与されている。

 

③は含まれる。賃貸住宅管理業者に代理権が授与されている。

 

④は含まれる。賃貸住宅管理業者に代理権が授与されている。

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【問6】

賃貸住宅の管理の実務に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

 

1 借主の入れ替えに伴う鍵交換のタイミングは、新しい借主が決定した後ではなく、従前の借主が退去したときが望ましい。

2 空室は、劣化や傷みをできるだけ防ぐため、室内に立ち入ることは望ましくない。

3 共用部分の清掃に関し、年間の清掃計画と定期点検計画を借主に事前に知らせることは、賃貸住宅管理業者の重要な役割である。

4 建物共用部分の廊下や階段に借主の私物が放置されている場合、賃貸住宅管理業者は発見後、直ちに自らその私物の移動や撤去をする必要がある。

 

正 解

 

①は不適切。鍵交換のタイミングは、前の借主の退出後に退去後リフォームが終了し、借受希望者に対する案内も終えて実際に入居する借主が決定した後とすることが望ましいとされている。

 

②は不適切。管理業者は、空室の劣化や傷みをできるだけ防ぐために、定期的に入室して換気、清掃を行い、設備の定期的な点検や補修、鍵の施錠等について管理すべきとされている。

 

③は適切で、正解。管理業者は、一方で貸主の財産である不動産の運用を支援し、他方で借主が快適及び安全に居住できる環境を整える役割を担っている。年間の清掃計画や定期点検計画を借主に事前に知らせることは、管理業者の重要な業務である。

 

④は不適切。管理業者は、建物共用部分に私物が放置されている場合であっても、所有者に無断で撤去したり移動したりすることは違法となる。このような場合、管理業者は、所有者等に対して直ちに撤去するよう求めなければならない。

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【問7】

賃貸住宅等の管理と自然災害に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

1 賃貸借契約締結時には、借主に対し、地方公共団体が作成した水害ハザードマップ等に記載された避難所の位置について示すことが望ましい。

2 ブロック塀の耐震診断や除去・改修等を行う場合、地方公共団体が設ける助成金制度の活用を検討することが望ましい。

3 震災等の不可抗力による賃貸住宅の損傷の修繕費用は借主が負担すべきものではない。

4 震災等の不可抗力により賃貸住宅の設備の一部が損傷した場合、貸主はその修繕を拒むことができる。

 

正 解

 

①は適切。宅地建物取引業法上、宅地や建物の賃貸借契約を締結する際に重要事項説明を行うときにも、水害ハザードマップ上に記載された避難所についてその位置を示すことが望ましいとされている(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方35条1項14号関係)。

 

②は適切。避難道路沿道のブロック塀などの除去・改修等に対して、各地方公共団体による支援制度が創設されている。

 

③は適切。震災等の不可抗力による賃貸住宅の損傷の修繕費用は借主ではなく、貸主が負担すべきこととなる。

 

④は不適切で、正解。この場合、貸主は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕義務を負う(民法606条1項)。

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【問8】

土地工作物責任に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。

 

ア 建物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、一次的には所有者が土地工作物責任を負い、所有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、占有者が土地工作物責任を負う。

イ 建物の管理を行う賃貸住宅管理業者は、建物の安全確保について事実上の支配をなしうる場合、占有者として土地工作物責任を負うことがある。

ウ 建物に建築基準法違反があることによって他人に損害を生じたときは、建設業者が損害賠償責任を負うのであって、建物の所有者及び占有者は土地工作物責任を負わない。

エ 設置の瑕疵とは、設置当初から欠陥がある場合をいい、保存の瑕疵とは、設置当初は欠陥がなかったが、設置後の維持管理の過程において欠陥が生じた場合をいう。

 

1 ア、ウ

2 イ、ウ

3 イ、エ

4 ア、エ

 

正 解

 

アは不適切。土地工作物責任は、第一次的に占有者が賠償の責任を負い、占有者が損害の発生を防止するに必要な注意をなしたことを挙証したときは、第二次的に所有者が賠償の責任を負うものとした(民法717条)。

 

イは適切。賃貸住宅管理業者が「占有者」に該当する場合は、土地工作物責任を負うことがある。

 

ウは不適切。建物に建築基準法違反がある場合であっても、第一次的に占有者が、第二次的に所有者が土地工作物責任を負う。

 

エは適切。その種の工作物として通常備えているべき安全性が欠けていれば瑕疵があるといえる。

 

以上により、イとエが適切であり、正解は③となる。

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【問9】

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省平成23年8月。以下、各問において「原状回復ガイドライン」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

 

1 賃貸借契約書に居室のクリーニング費用の負担に関する定めがない場合、借主が通常の清掃を怠ったことにより必要となる居室のクリーニング費用は貸主負担となる。

2 賃貸借契約書に原状回復について経年劣化を考慮する旨の定めがない場合、借主が過失により毀損したクロスの交換費用は経過年数を考慮せず、全額借主負担となる。

3 賃貸借契約書に原状回復費用は全て借主が負担する旨の定めがあれば、当然に、借主は通常損耗に当たる部分についても原状回復費用を負担しなければならない。

4 賃貸借契約書に借主の帰責事由に基づく汚損を修復する費用について借主負担とする旨の定めがない場合であっても、借主がクロスに行った落書きを消すための費用は借主の負担となる。

 

正 解

 

①は不適切。経年劣化や通常損耗を超えた損耗等については、借主に善管注意義務違反等に基づき費用負担が求められる可能性がある。

 

②は不適切。当事者間に合意がない場合であっても、経年劣化と認められる場合には、借主は費用を負担する義務を負わない。

 

③は不適切。当事者間に合意がある場合であっても、借主が責任を負わない場合がある(最判平17・12・16)。

 

④は適切で、正解。このような借主には、善管注意義務等違反があると認められ、費用を負担すべきこととなる。

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【問10】

原状回復ガイドラインに関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

 

1 壁クロスの毀損箇所が一部分であっても、他の面と色や模様を合わせないと商品価値が維持できない場合には、居室全体の張り替え費用は借主負担となる。

2 フローリングの毀損箇所が一箇所のときは、居室全体の張り替え費用を借主の負担とすることはできない。

3 畳の毀損箇所が1枚であっても、色合わせを行う場合は、居室全体の畳交換費用が借主負担となる。

4 鍵の紛失に伴う鍵交換費用は、紛失した鍵の本数に応じた按分割合による額又は経過年数を考慮した額のいずれか低い額による。

 

正 解

 

①は不適切。当該部屋全体のクロスの色や模様が一致していないからといって賃貸借の目的物となり得ないというものではなく、居室全体の張替費用を借主に負担させるのは不適切といえる。

 

②は適切で、正解。毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた借主の負担とすることは妥当であるが、居室全体の張替費用を借主に負担させるのは不適切といえる。

 

③は不適切。畳についても、クロスと同様、毀損箇所が一枚であれば、借主はその一枚についてのみ補修費用を負担すれば足りることとなる。

 

④は不適切。借主が鍵を紛失した場合は、借主は、シリンダーの交換費用を負担することとなる。

 

(『住宅新報』2021年11月30日号「21年度 賃貸不動産経営管理士試験 本紙 回答と解説」より)

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