2022年問題とは何か?

2022年に土地や住宅の価格が暴落するという話を最近よく耳にしませんか。

これは一般的に「2022年問題」と言われており、不動産業界では大きな問題として取り上げられています。

土地や住宅の価格が暴落すると、土地所有者はもちろん、一軒家の住宅所有者も自分の資産価値が下がってしまわないか不安になるでしょう。

2022年問題でもっとも気にするべき点は「自分の所有している不動産資産がどのエリアにあるか」です。

その点を念頭に置いていただいた上で、なぜ2022年に不動産価格が暴落すると言われているのか、今知っておくべき3つの知識と対策法について解説します。

1:不動産業界における「2022年問題」とは

1992年に制定された新生産緑地法。

最低30年間「売れない・貸せない・建てられない」といった制限がある代わりに、税制面での優遇を受けられるという法律です。

新生産緑地法の期限は1992年の30年後、つまり2022年に一斉に生産緑地の指定解除が発生するのです。

生産緑地に指定されている期間は土地の譲渡ができませんが、指定解除後は市町村に対して売却の申し出が可能になります。

生産緑地が売却されることにより、下記の図のように土地開発や区画整理がされていきます。

※ホンダ商事株式会社 生産緑地問題 セミナー資料より

2022年以降固定資産税や相続税等の税制優遇が受けられなくなります。

所有メリットを失った生産緑地を皆が一斉に手放すことにより、大量に市場に土地が供給されます。

その結果地価の下落や新築住宅の過剰供給が発生し、空室増加や不動産価格の大暴落を招くと言われています。

これが不動産業界における「2022年問題」です。

2:「2022年問題」はいつから起こる?

生産緑地農地の固定資産税・相続税対策は2022年3月が期限になっています。
4月以降は税金の税制優遇が受けられなくなります。

そのため2022年4月以降に2022年問題が表面化するということになります。

では、生産緑地とはどのようなものでしょうか。詳しく解説いたします。

3:生産緑地とは

「生産緑地」とは今から50年ほど前、1972年に生産緑地法で定められた土地制度の1つです。

当時、都市部にあった農地が大量に宅地に転用された結果、住環境の悪化や保水機能を失ったことによる自然災害が多発して大きな社会問題となりました。

この問題を解決するために制定されたのが生産緑地法です。

生産緑地は以下の定義がなされています。

・良好な生活環境の確保に相当の効用がある
・公共施設等の敷地として適している
・農林漁業の継続が可能である
・500m2以上(2017年改正で300m2)の規模である

これらを満たすことで生活環境を保護することを目的としていました。

3-1.生産緑地の特徴

生産緑地には以下の特徴があります。

1.30年間の営農義務
生産緑地を農地として管理し、建築物や工作物の造成、土地に手を加える行為はできません。

2.相続税の納税猶予
相続や遺贈により生産緑地を取得した場合、その取得者は生産緑地分の相続税の納税猶予を受けることができます。

3.固定資産税の優遇
生産緑地は一般農地並みの低税率の課税がなされます。

農林水産省の「農地の保有に対する税金」によると、以下の税額が設定されています。

一般農地
1,000円/10a
生産緑地
数千円/10a
一般市街化区域農地
数万円/10a
特定市街化区域農地
数十万円/10a

市街化区域内の農地の固定資産税が宅地並みに設定されている理由は「市街化区域内の農地の宅地転用を促すこと」のためでした。
一方、生産緑地は宅地転用の乱立をストップさせるために制定された制度ということになります。

このような矛盾を抱えながら生産緑地法は時代に合わせた変化をしていきます。

3-2.生産緑地法の歴史

1972年:生産緑地法制定
市街化区域内に数多く存在した農地を宅地に転用するため、最初の生産緑地法が制定されます。

1992年:新生産緑地法制定
ところが宅地転用が増え過ぎてしまい、環境の悪化や自然災害が多発してしまいます。
そこで「生産緑地については農地並み課税を継続する」とし、指定条件の厳しかった生産緑地の条件が緩和されて指定農地が増加しました。

2016年:都市農業振興基本計画閣議決定
都市計画法において「市街化区域にある農地は宅地化すべき」とされてきました。
しかし時代の流れとともに、都市部においても農地や緑地は必要なものと認識されるようになり、都市農業振興基本計画が決まります。

2017年:新生産緑地法改正
こうした流れを受けて、2017年に生産緑地法はさらに改正されています。

・「特定生産緑地」を新たに指定
・条例による面積要件の引き下げ
・行為制限の緩和

特定生産緑地は、買取の申し出をできる時期が10年先送りにできるように改正されました。
また、生産緑地地区の面積要件をこれまでの500平米から300平米に引き下げることが可能となりました。
そして、土地内の建築に関しても、農産物を使った商品の製造、加工、販売のための施設やレストランを設置できるよう変更されています。

2018年:田園住居地域創設・都市農地賃借法制定
住宅と農地が混在し、両者が調和する地域をあるべき市街地像として都市計画に位置付けし、生産緑地の所有者が第三者に貸しやすくなる法律が制定されます。

このように生産緑地法に関する法律は、2022年問題の影響を可能な限り最小限に抑えるように何度も改正を繰り返しています。

4:2022年問題で影響の大きいと予想されるエリア

平成29年「都市計画概況調査」によると、生産緑地地区は全国で12,972.5ヘクタールとなっています。

エリア別に見てみると、特に多いのは東京都、大阪府、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県になります。

その内、東京都には3,296ha(東京ドーム約716個分)の生産緑地があります。

※ホンダ商事株式会社 生産緑地問題 セミナー資料より

ただ、これらのすべてが生産緑地指定を解除されるわけではなく、土地開発の際に道路用地も一定量必要とされますので、実際に解除される面積は少なくなります。

東京都の行政区別に見ていくと行政区によって生産緑地の面積は大きく異なり、東京都の生産緑地の9割程度が市部にあります。

その中で上位を占めているのが八王子市、町田市、立川市となっています。

東京23区で見ると、現在の需給バランスが大きく崩れるほどの生産緑地はなく、さらに駅から徒歩10分圏内にあるような生産緑地はほとんどありません。

全国的に見ても駅近に生産緑地が存在するケースは少ないため、都心部や駅近の地域では「2022年問題」を大きく懸念する必要はないと言えます。

「2022年問題」の影響をもっとも受けやすいのは、郊外かつ駅から少し距離があるファミリー向けの住宅です。

ファミリー向け住宅は駅から少し距離があっても需要があるため、生産緑地がデベロッパーやハウスメーカーに売り渡されると、ファミリー向けの賃貸物件が乱立するような事態が起こり、空室率の上昇や賃料の下落が発生する可能性があります。

もちろん、郊外に生産緑地がどの程度存在するか、その土地が2022年に売却予定の検討がされているかなどによって状況が変わりますが、一般的に郊外エリアは2022年問題の影響が大きいと言えるでしょう。

もし郊外部での不動産の売却・投資等を検討している方は、自分の所有している不動産のエリアにどの程度生産緑地が存在するのかを早めに確認しておくと、いざというときに慌てずにすみます。

 

「2022年問題」についての背景と影響についてお分かりいただけましたでしょうか。