21年度管理業務主任者試験 本社正解と解説 【問1~10】

【問 1】 正 解 ①

①は最も適切で、正解。 心裡留保による意思表示は、原則として有効であるが、その意思表示が表意者の真意ではないことを相手方が知り、又は知ることができたときは、無効である。

②は不適切。 通謀虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗することができない。第三者の過失の有無は問わない。本肢のCは善意なので、Cに過失があっても、Aは、Cに対して無効を主張することができない。

③は不適切。 詐欺による取消しは、善意無過失の取消前の第三者に対抗することができない。Dには過失があるので、Aは、Dに対して取消しの効果を主張することができる。

④は不適切。 強迫による取消しは、取消前の第三者に対抗することができる。第三者の善意・悪意や過失の有無は関係ない。したがって、Aは、善意無過失のEに対して取消しの効果を主張することができる。

【問 2】 正 解 ③

①は適切。 連帯債務者の1人に対する免除は、原則として他の連帯債務者に対して効力を生じない。したがって、DがAに対して残債務を免除しても、Bには免除の効力が生じず、Bは300万円の支払を拒むことができない。

②は適切。 弁済等をした連帯債務者は、その額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、弁済等の額のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。したがって、Bは、270万円の3分の1である90万円ずつについて、AとCに対して求償することができる。

③は最も不適切で、正解。 反対債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は履行を拒むことができる。したがって、Aが拒むことができるのは、Cの負担部分である300万円についてのみである。

④は適切。 償還の資力がない連帯債務者がいる場合、その償還できない部分は、求償者と他の資力がある者の間で、負担部分に応じて負担する。本肢では、Cの弁済額700万円をAとCが2分の1ずつ負担するので、CはAに対して350万円を求償することができる。

【問 3】 正 解 ④

①は不適切。 債権者代位権は、債権者がその債権を保全するために、自己の名で債務者の権利(被代位権利)を行使することができる権利である。債務者の代理人として行使するものではない。

②は不適切。 債権者は、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権額の限度で被代位権利を行使することができる。したがって、Aが行使できる債権額は200万円である。

③は不適切。 債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。したがって、Cは、Aに対して相殺の抗弁を主張することができる。

④は最も適切で、正解。 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。したがって、Aは、A自身への直接の金銭支払を求めることができる。

【問 4】 正 解 ③

①は適切。 制限行為能力者が代理人としてした行為は、原則として、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

②は適切。 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。したがって、BがCの目的を知ることができたときは、Cの行為は無権代理行為とみなされる。

③は最も不適切で、正解。 無権代理行為を追認するかどうかの催告に対して、本人が期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。

④は適切。 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

【問 5】 正 解 ④

①は適切。 確定判決等によって確定した権利の時効期間は、10年になる。したがって、本肢の債権は、確定判決を得た時から10年間行使しないと、時効によって消滅する。

②は適切。 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない。

③は適切。 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。滞納していることを認めることは「権利の承認」にあたるので、その時から時効の更新の効力が生じる。

④は最も不適切で、正解。 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。したがって、消滅時効を主張することができない旨の定めは無効であり、Eは、債務の消滅を主張することができる。

【問 6】 正 解 ①

①は最も不適切で、正解。 マンション管理業者は、事務管理業務の管理事務の一部又は管理員業務、清掃業務若しくは建物・設備管理業務の管理事務の全部若しくは一部を、第三者に再委託することができるが、事務管理業務の管理事務の「全部」を再委託することはできない。

②は適切。 管理組合は、マンション管理業者に管理事務を行わせるために不可欠な管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、器具、備品等を無償で使用させるものとする。

③は適切。 マンション管理業者は、出納業務を行う場合において、管理組合の組合員に対して管理委託契約に従って管理費等の督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は管理組合が行うものとする。

④は適切。 解除事由の有無にかかわらず、管理組合及びマンション管理業者は、その相手方に対し、少なくと3月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。

【問 7】 正 解 ②

アは不適切。 マンション管理業者は、管理規約の提供等を行う相手方から、業務に要する費用を受領することができる。

イは不適切。 マンション管理業者は、当該組合員が管理費及び修繕積立金等を滞納しているときは、管理組合に代わって、媒介業者である宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができる。

ウは適切。 本来、宅地建物取引業者への管理規約等の提供・開示は管理組合又は売主たる組合員が行うべきものなので、これらの事務をマンション管理業者が行う場合には、管理規約等においてその根拠が明確に規定されるとともに、管理委託契約書に規定されることが必要である。

エは適切。 組合の財務・管理に関する情報を提示・開示することは、購入予定者の利益に資すると共に、マンションの資産価値の向上等の観点からも有意義である。

適切なものはウとエの2つであり、②が正解である。

【問 8】 正 解 ②

①は適切。 マンション管理業者は、地震、集中豪雨等により、管理組合のために、緊急に行う必要がある業務で、管理組合の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、管理組合の承認を受けないで実施することができる。この場合、管理業者は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を管理組合に通知しなければならない。

②は不適切で、正解。 管理組合は、マンション管理業者が業務を遂行する上でやむを得ず支出した費用については、速やかに、管理業者に支払わなければならない。ただし、マンション管理業者の責めによる事故等の場合はこの限りでない。

③は適切。 マンション業者は、事故等の事由により、管理組合のために緊急に行う必要がある場合、専有部分等に立ち入ることができる。この場合において、マンション管理業者は、管理組合及び管理組合が立ち入った専有部分等に係る組合員等に対し、事後速やかに、報告をしなければならない。

④は適切。 マンション管理業者は、管理組合又は管理組合の組合員等が、マンション管理業者の責めによらない災害又は事故等による損害を受けたときは、その損害を賠償する責任を負わない。

【問 9】 正 解 ①

①は不適切で、正解。 管理費は、区分所有者が管理組合に納入しなければならない。

②は適切。 専有部分を2人の区分所有者が共有している場合、管理費は、2人がそれぞれ全額支払う義務があり、管理組合は、どちらに対しても全額請求できる。

③は適切。 区分所有者に破産手続き開始の決定がなされた場合は、管理組合は、滞納管理費債権について、破産手続きに参加できる。

④は適切。 マンション管理業者は、滞納管理費について、管理組合の訴訟代理人になることはできない。

【問 10】 正 解 ②

①は不適切。 内容証明郵便による督促は、民法に規定する催告に該当する。催告があったときは、その時から6カ月を経過するまでの間は、時効は完成しない。

②は適切で、正解。 支払督促の申立てに対し、債務者が異議の申し立てをすれば、通常の訴訟に移行する。

③は不適切。 調停は弁護士に依頼することができ、禁止されていない。

④は不適切。 少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えに利用できるので、60万円を超える場合は、60万円以下になるように分割請求することにより、少額訴訟を提起できる。

『住宅新報』2021年12月21日号「21年度管理業務主任者試験 本社解答と解説 」より

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