ど素人から金持ち大家さんになった人々

第10回 田園調布のカフェ店主になった元銀行員大家さん

菅井敏之さんのプロフィール
1960年生まれ、山形県出身。大学卒業後、三井銀行に入行。「幸せなお金持ち」を研究した結果、10人中8人が大家さんだったことから、2004年に不動産投資をスタート。2008年に家賃年収が約7,000万円となったのを機に、銀行を退職。2012年に大田区田園調布に『SUGER COFFEE』をオープンした。著書に「お金が貯まるのは、どっち!?」(アスコム)などがある。

■ 理想の「金持ち大家さん」と現実の自分とのギャップ

――実際に大家さんになってみて、いかがでしたか?

菅井敏之さん 
目標だった「不労所得」を得てやりがいを感じる一方で、難しさも感じるようになりました。高利回りにひかれて購入した築25年のファミリーマンションの空室が埋まらず、管理費を節約するために自主管理にしたところ、長期の滞納を見逃すというミスをしてしまったんです。

「利回り12%、非公開、任意売却物件、フルローン可」という条件に飛びついて、「買わなきゃ損」と思ったことが失敗でした。売却も考えましたが、金融機関のペナルティー等があり、すぐにはできない。利回りは埋まってこそのもの。融資がつくから買うというやり方はダメですね。この物件を通して地方の築古物件の厳しさを実感しました。

――今はすべての物件を管理会社さんにまかせているのですか?

菅井敏之さん 
そうです。自分は方針を決めることだけに集中しています。物件を買った当初は、空室が出るたびに営業に出かけていて、「自分は営業に向いている」と思っていました。でも、空室は次から次へと発生しますから、きりがありません。今は、大家に必要なのは何にも増して、業者さんとのパートナーシップだと考えています。

もちろん、DIYが好きな大家さんや、営業が好きな大家さんは、自分でやればいいと思います。でも、私の場合は営業もリフォームも一通りやってみて、「これは自分が思い描いていた金持ち大家さんの姿とは違う」と感じるようになりました。今は、信頼できるチームの皆さんにすべて任せていて、非常にうまくいっています。

■ いい管理会社を見極めるポイント

――チームの仲間とはどのようにして出会ったのですか?

菅井敏之さん 
茨城県つくば市の物件を買ってしばらくして空室が止まらなくなりました。困り果て、ネットでつくばの物件を扱う管理会社を探していたら、魂のこもった広告をしている業者さんをみつけて、「この物件は埋まるでしょうか」と相談に行ったんです。

すると、非常に親身なアドバイスをくれ、その地域で賃貸経営をする上で役に立つレポートまでまとめてくれました。その会社が、つくばの物件のパートナーになってくれています。

セミナーで隣の席に座ったのをきっかけに、2棟の管理をお願いしているところもあります。信頼できるパートナーを持つと、オーナー業は本当にやりやすくなります。今では物件を買うときもまず、管理会社さんに相談しています。

――いい管理会社さんを見極めるコツを教えてください。

菅井敏之さん 
管理物件全体の入居率を質問して、すぐに数字が出てこないところはNGでしょう。そのほか、個人プレイに頼るのではなく、組織として客付けの仕組みができていることも大切です。あとは、感性でしょうか。たくさんの不動産会社をまわってみれば、自分に合うところがわかると思います。

――不動産会社をまわったり、セミナーに出たり、積極的に行動したことが、いい出会いにつながったのでしょうね。

菅井敏之さん 
「類は友を呼ぶ」といいます。自分が本気で勉強して、行動していれば、似たような人が集まってきます。同じ意味で、私は言葉遣いにも注意していて、汚い言葉やネガティブな言葉、不平不満はできるだけ言わないようにしています。すると、同じように前向きな人とご縁ができるんですよ。

■ セミリタイヤ後の生活について

――セミリタイヤして、カフェのオーナーになるまでの経緯を教えてください。

菅井敏之さん 
銀行を辞めてすぐの頃は、知人に頼まれて、ある会社の上場準備を手伝っていました。ただ、抜けられなくなりそうだったので、50歳でその会社も辞め、そこから2年間は美術館巡り、サルサダンスのレッスン、箱根や熱海へのドライブ、一人カラオケなど、好きなことだけをして過ごしていました。

その時に思ったのが、「大人が落ち着いて過ごせる場所って少ないな」ということです。それで、おとな向けのネットカフェをやりたいと思い、起業家の先輩に相談したところ、「今はWIFIの時代だからネットカフェはもうはやらない、それより、カフェがいいよ」と言われて、その気になりました(笑)。

――以前から、カフェのマスターになりたいという夢があったわけではないんですね。

菅井敏之さん 
なかったです(笑)。でも、コーヒー豆の販売はリピーターが得やすいですし、社会から離れていた自分にとって、自分の居場所ができるこの仕事は魅力的に感じました。実務的なことはアルバイトの女性がやってくれるので、私は接客を楽しんでいます。実は、銀行員時代はお客さんの相談に乗ることが多かったんですが、今も同じことをしています(笑)。

――ご家族は、一家の大黒柱が銀行員を辞めて、2年間もリタイヤ生活をしているだけでも、かなり驚いたと思います。カフェを始めるときに、反対はされませんでしたか?

菅井敏之さん 
反対はなかったです。妻に連帯保証人をお願いしたときも、問題なく引き受けてくれました。息子たちも、時々店を手伝いに来てくれますよ。カフェの経営はまだ順調とはいえませんが、かっこ悪いところも含めて、父親の背中を見せたいですね。ここからリカバリーしていくから、ちゃんと見ていろよっていう感じです。

――理解のあるご家族ですね。何か秘訣はあるのでしょうか?

菅井敏之さん 
うーん、「信頼残高」を積み上げてきたことかな、と思います。結婚当初から、日々の生活の中での相手からのギフトを見逃さず、「おいしいね」「ありがとう」といった言葉をきちんと伝えるようにしてきました。家族だからといって、相手がしてくれることで、当たり前のことなんてないと思うんです。

――素敵なご家族ですね。これからの菅井さんの目標を教えてください。

菅井敏之さん 
人生の目標という意味では、「大事な人を大事にすること」です。人とのかかわりの中でしか、幸せって感じられないですよね。ですから、家族に限らず、大事な人を大切にしながら生きていきたいです。不動産に関しては、いいものがあれば買っていくというスタンスです。あとは、このカフェを軌道に乗せたら、また次のことを考えようと思います。

前編:第9回 「幸せなお金持ち」を研究したら10人中8人が「大家さん」だった


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